「ベネッセアートサイト直島」に代表されるような、アートを中心としたユニークな地域づくり・ブランドづくりで成功している香川県直島。これらの取り組みについて多面的にお話を聞くため、直島(なおしま)と豊島(てしま)を取材で訪れた。
瀬戸内海に浮かぶ直島は、香川県に属しながらも岡山県宇野港から船で20分ほどの離島。人口は3,300人弱。直島という名前は、島民が純粋で素朴なことに由来するという。
直島では、島内のいたる所でアートと触れ合うことができ、休日のみならず平日でも離島とは思えないほどの観光客が訪れている。その観光客は日本人だけではなく、韓国やイギリスなどさまざまな国から訪れているようだ。
さらに、今年7月19日から10月31日の期間は『瀬戸内国際芸術祭』が開催され、予想をはるかに超える観光客が直島を訪れたという。
直島から船で約20分のところにある豊島は、岡山県と香川県の中間に位置し、日本で最初に定められた瀬戸内海国立公園(※)のなかにある。島の人口は1,000人弱。
同島では1978年頃から有害産業廃棄物が不法に投棄され、それがマスコミに取り上げられたことにより、その名が全国的に知られるようになった。しかし、マイナスイメージで取り上げられたにも関わらず、皮肉にも当時は今より観光客が多かったという。ただし、それももはや過去の問題として、近年ではマスコミにも取り上げられなくなった。今後は、隣に位置する直島のアートによる集客力を見習い、豊かな自然とアートで集客を図っていきたいという。
実際に、豊島に上陸して自転車で美術館などを周ってみたが、棚田や手付かずの自然、瀬戸内海を眺められ、直島とも違うゆったりした時間を過ごすことができた。産業廃棄物の不法投棄で有名になった豊島だからこそ、逆に豊かな自然をアピールしていくのは面白い試みだと思う。しかし、日本の離島のほとんどは、自然が豊かな島が多い。そのなかでどう差別化を図っていくのか、今後の豊島の動きが心から楽しみである。
実は、私自身も離島の出身である。これまでは、「地元のために何かしたい」という気持ちはあっても、「何をすればいいのか」がわからなかった。しかし、今回の取材を通じて、それまでのモヤモヤが晴れたような想いがした。
【長嶋絵美】
※瀬戸内海国立公園とは、紀淡、鳴門、関門、豊予の4つの海峡に区切られた面積の広い海域を公園区域として指定されており、陸域・海域を含めると日本一広大な国立公園である。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら