梅林建設(株) 専務執行役員・福岡支店長 岡田 紀朗 氏
<本当に「公平」な入札制度とは?>
建設業界というのは、日本がここまで成長してくる長い歴史のなかで、多くの人に働く場所を提供するという大事な役割を担ってきました。一昔前までは農家も人材のクッションになっていたので、どんなに景気が悪くなってもホームレスになる人はいませんでした。
いまは政策によって建設業から他業種への転換が奨励されるなどしていますが、仮に経営者が業種転換に成功したとしても、そこで働く人たちは簡単には別に仕事にはつけないのです。セーフティーネットとして生活保護を受ける人が増えていますが、働く人が低賃金にあえぎ、アルバイトや生活保護の方の収入が多いというおかしなことになっています。これでは日本はだめになってしまいます。働くことができる人にまで生活保護費をばらまくのではなく、仕事をつくって報酬が得られるようにするのが、まっとうな道なのです。
建設業界では入札改革が進んでいます。最低入札価格の公表などによって競争は公平になり、談合もなくなりました。最低入札価格で入札すればくじ引きになって、積算能力や工事の技術が劣った業者でも選ばれる可能性があるという弊害も是正しようという動きが進んでいます。しかし一方で大手ゼネコン以外に参加できそうにない厳しい参加条件がついた入札が行われるといったケースもあり、本当の意味での公平にはなっていないのが現状です。私が危惧するのは、入札を行う行政側の権限や裁量が大きくなりすぎているのではないかということです。例えば、年度をまたいで行われる公共工事で、既に工事が始まっているにもかかわらず、次年度の予算がつかず、工事途中で中断させられるという事態も発生しています。役所として「今年度は予算がないから工事ストップ」ということでいいのでしょうが、私たち業者としては中断していても工事現場から担当者を外すわけにはいきません。管理する責任もあるのです。地域の中小建設業者も含めて健全に仕事ができるようにするための配慮や仕組みがもっと必要なのではないでしょうか。
そうしなければ、冒頭に申し上げたように、私たち建設業者の大事な役割である、地域の多くの人たちの雇用を守るということが困難になります。
<問題は社会のなかでお金が回らないこと>
国や自治体が公共工事を削減しているのは、単純に税金の無駄遣いを減らすためではありません。国や自治体にお金がないことが問題なのです。なぜ国や自治体にお金がないのか。それは社会のなかでお金がうまくまわっていないからではないでしょうか。
不況でも儲かっている業種や企業はありますが、そうしたところからお金は社会に出ていかない。これは将来の展望が描けない今の社会に問題の根幹があるだと思います。私たち建設業界は、よそ見をせずに本業を全うすることで地域・社会に貢献するように努めなければなりません。同時に行政やほかの業界とも連携して、だれもが明るい未来を思い描けるような社会を自分たちの手でつくっていくことが大事なのだと思います。
<プロフィール>
岡田 紀朗 (おかだ としろう)
1940年8月生まれ。67年、熊本大学大学院土木工学修士課程卒業。同年4月、「梅林建設(株)」入社。趣味はゴルフと写真。
<会社概要>
梅林建設(株)
代表者:梅林 秀伍
所在地:大分市舞鶴町1-4-35大分三井ビル(本社)
福岡市中央区大名1-4-1 NDビル(福岡支店)
設 立:1940年10月
資本金:4億5,000万円
TEL:092-712-9111(福岡支店)
URL:http://www.umebayashi.jp/
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