23日、北朝鮮の韓国・延坪島への砲撃は、世界に緊張を走らせた。しかし、海を挟んだ隣国・日本では、悪い意味で動きが見られなかった。砲撃に関するニュースが各メディアで報じられていた夕刻、海上自衛隊で護衛艦勤務の現職幹部に問い合わせたところ、非常呼集もなく、佐世保港の艦艇にも動く気配はないという。さらに驚くべきは、北朝鮮の砲撃をテレビを見て知ったというのだ。
北朝鮮の意図が明らかでない以上、攻撃が日本にも飛び火する可能性は少なくはない。その場合、警戒すべきはテポドン、ノドンといった弾道ミサイルである。折木良一統合幕僚長は、航空自衛隊の早期警戒管制機を1時間以内に飛行できるように待機指示を出したという。しかしながら、BMD(弾道ミサイル防衛)構想には、海上自衛隊のイージス艦が重要な役割を持つ。航空のみならず海上でも警戒態勢をしいてしかるべき状況だが、指揮すべき最高司令官(内閣総理大臣)および防衛大臣には、その認識が不足しているとしか思えない。また、国防の任にあたる自衛官が、守るべき民間人と同レベルで隣国の危機を知っている現状に尋常ならざる不安を感じる。
ある海上自衛隊幹部OBは自身の体験談の回顧とともに非難の声をあげる。「2002年、日韓ワールドカップの決勝戦が行なわれた日のことだ。私が乗っていた護衛艦は奄美大島に錨をおろし、乗員は休暇で上陸していた。夜、突然、艦から呼集がかかった。北朝鮮が奄美大島近海にミサイルを打ち込んだという知らせだった。結局は誤報で事なきを得たが、すべての乗員が帰艦し、出動に備えて待機した。そのときのことを考えると、今回の日本政府の対応は信じられない。国民に何かがあってからでは遅い」。
朝鮮半島のみならず、中国、ロシアの動向にも注意すべきだ。統合幕僚監部の発表によると、19日午後10時頃、海上自衛隊第2航空群(八戸)所属の対潜哨戒機「P-3C」が、宗谷岬の東約150kmの海域を北西進するロシア海軍のデルタⅢ級弾道ミサイル原子力潜水艦1隻及びバクラザン級救難曳船1隻を確認(当該艦艇は宗谷海峡を西航)。
20日午前4時頃には、海上自衛隊第6護衛隊(横須賀)所属の護衛艦「はるさめ」が、上対馬の東約50kmの海域を南西進するロシア海軍のウダロイⅠ級ミサイル駆逐艦1隻及びゴーリン級航洋曳船1隻を確認(当該艦艇は対馬海峡を南下)している。
強大化が進む中国海軍の動向もふまえれば、日本を取り巻く環境が安穏とできる状況ではないことはすぐに分かるはずだ。同日夕、菅直人首相は記者からの取材に対し「どういうことが起きても対応できる、備えは万全だと言える態勢を作りたい」と語っていた。「これから勉強します」という意味を含んでないことを心から祈りたい。
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