菅政権の支持率低下を追い風にし、福岡市長選で民主党推薦候補を破った自民党。その流れは、来年(2011年)4月の統一地方選挙へ。すでに現職、新人問わず、多くの立候補予定者が選挙準備に入っている。本来、地方の基盤をさらに強化し、政権の安定を図ろうとしていた民主党にとっては、このままでは今ある議席を守るだけの背水の陣になるだろう。国政では第3勢力として、みんなの党の躍進が期待されているものの、同党の地方における組織力はいまだ脆弱。統一地方選における変化は望めなくなったのだろうか。
<民主党新人は苦戦必至>
政権交代の余勢を駆って、地方議会における勢力図の塗り替えを目指していた民主党であったが、鳩山由紀夫前首相、小沢一郎元幹事長の政治とカネ疑惑により支持率低下。その挽回を期待させた菅直人政権も参院選の消費税増税発言で失墜、代表選後盛り返すも尖閣諸島沖の中国船衝突事件で再び急落。1度ならず2度、3度と支持率低下をひき起こし、もはや政権維持すらも危ぶまれる状況となってきた。
本体が不安定な状況では、地方における躍進が望めるわけもない。11月12日発表された時事通信による政党支持率の世論調査では、ついに民主党(16.2%)を自民党(16.5%)が上回った。国政における人気の回復がなければ、民主党は統一地方選でも再び第2勢力の座に甘んずる結果となるだろう。選挙は基本的に現職が有利であり、追い風どころかむしろ逆風を受ける民主党の新人候補が、みな苦戦を強いられることは必至だ。民主党が低迷する今、福岡市議会において第1勢力の自民党が最大会派の座を維持し、市議会の勢力図が塗り替えられないことは容易に想像がつく。
<第3のリーダーは現れるか>
しかしながら、相も変わらぬ二大政党の構図にウンザリしている有権者は多い。その不満の受け皿が7月の参議院選挙でいうところのみんなの党だ。しかし、冒頭で述べたように同党の地方における組織力は脆弱。福岡市では公認・推薦の候補がいまだ姿を見せず、出遅れている感は否めない。むしろ福岡市では、既存勢力を取り込む考えである可能性が高く、実際に7つの議席を持つ会派・みらい福岡が同党に接触している。同会派のうち何名かが、統一地方選でみんなの党から出馬するとの情報もある。
福岡市長選挙の総括では、中央の政党色が全くない市民派有力候補の不在が二大政党の介入を招いたとした。地方における"真の第3勢力"としては、これから各自治体で存在感を増すであろう既存政党から独立した地域政党に期待がかかる。
すでに愛知県名古屋市では、河村たかし市長が率いる減税日本が、40名の市議候補の選定が進み、順次、選挙準備に入っている。大阪では橋下徹府知事率いる大阪維新の会が9月15日に31名の第一次公認を発表した。
福岡市でも政党に頼らず、独自に選挙準備を進めている数名の新人候補予定者が市民政党の立ち上げを画策している。ただし、こうした新人たちにとっては、河村市長や橋下知事といった求心力のあるリーダーの存在が不可欠だろう。市全域に無所属・新人連合を拡げ、大きなムーブメントを起こさなければ、自分たちへの追い風とはならない。はたして、そのような人物が現れるだろうか。
【山下 康太】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら