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特別取材

【特別連載】積水ハウス50周年への提言~100周年へのさらなる飛躍を目指して(29)
特別取材
2010年11月30日 15:48

<今、最高経営責任者のやるべきこと 2>

 花王とライオンは、30年前まではほぼ拮抗しながら競争をしていた。ライオンがそれまでの販売チャンネルを問屋制度から直販体制に切り替えた時から、一気に差が開き始めた。キヤノンとミノルタも、東のキヤノン、西のミノルタと言われ、市場を二分していた。しかし1969年、キヤノンカメラのカメラを外し、キヤノンと社名変更して多角化を目指したことで、一気に差が開き始めた。ミノルタがカメラを外したのは94年のことだった。このように、経営戦略の違いから大きく水をあけられてしまうものだ。

 積水ハウスも大和ハウスに首位の座を奪われて6~7年になるが、販売戦略には大きな差はない。原因は、積水ハウスの低迷の原因を作った最高経営責任者に起因しているのではと思っている。
 
 11年前、現CEO会長・和田氏が社長に就任したことを契機として、社内の空気が一変した。実質上の創業社長・田鍋氏は、昔風と言われるが家族的・全員参加の経営を行ないながら、業界一の企業、業界で初めての1兆円企業に導いたのである。そして晩年、自分の経営哲学の集大成として、積水ハウスの企業理念「人間愛」を制定したのである。社員の「やる気」を引き出していったのであった。

 しかし、権威主義の新社長は、前章で述べた経営者のあるべき姿と田鍋氏の経営哲学とに大いなる違いがあると社員は感じたのだろう。社内の空気は事なかれ主義になり、次第に活気はなくなり、やる気は失せていったのだろう。長い間培われた和気あいあいの伝統が消え失せ、それでも、積水ハウスを愛する社員の熱い遺産を食いつぶしながら徐々に力を弱め、ついには大和ハウスに抜かれてしまうのである。大和ハウスに画期的な経営戦略が打たれたわけでもなかった。これは積水ハウスの自失であり、最高責任者の責任としか言いようがない。

 今、最高責任者がやるべきことは人心一新、身を引くことだろう。時代も厳しいが、競争相手の大和ハウスは来3月期は予定より大幅上方修正増収増益の見込みだ。これ以上差を開けられないように、100周年へ向けて人心一新し、積水ハウスの原点に立ち上り、人間を大事にする会社に作り変えるべき時ではないだろうか。

(つづく)

【野口 孫子】

※これは積水ハウスにエールを送るものであり、誹謗中傷するものではありません。

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