富士経営グループ 代表取締役 崎田 松男
<経営者責任だけでない中小企業のピンチ>
税務当局のデータでは現在、我が国の中小企業の70%は赤字です。良否を別にし、粉飾企業を含めれば、現在90%近くの企業が再生しなければならない状況です。わずか10%程度の企業しか健全でないということは、経営者だけではなく、国の経済構造に問題があります。たとえば、大手企業は国が積極的に救済します。法律も然りで大手企業優先。今こそ中小企業が市場でフェアな競争ができる法律やインフラを整備すべきなのです。
しかしながら我が国は無策。「成長企業、成長産業」と盛んに唱えますが、その前に仕事を創ることが国家の役割です。2010年に閣議決定された新成長戦略においては、環境エネルギー分野革新、グリーン・イノベーションなど7つの分野が挙げられました。しかし成長分野とは、1千の業種を実行し、ヒットするのは1つか2つ。さらに新分野にはすでに大手企業が参入しています。
我が国は、大手だけが儲かるような市場構造を解体し、中小企業がフェアな市場原理で競争し切磋琢磨できる経済社会をつくり上げ、自助努力で報われるという当たり前の経済構造を再構築しなければなりません。
2009年12月4日に施行された中小企業金融円滑化法は、たしかに倒産件数および資金難を理由にした自殺者を減少させました。表面上の数値を見ると、中小企業が再建されると思いますが、実のところ同法は一過性的な延命措置。実施されたのは貸付変更や返済猶予であって、借入金が無くなるわけではありません。
したがって、回収の時期に入れば大惨状に陥ります。倒産や資金難を理由にした経営者の自殺が激増するでしょう。つまり、抜本的な中小企業の防衛にはなりません。本質として、『仕事を創ること』が重要なのです。
<農水・畜産業を主軸に循環型社会を形成>
私の顧客で、以前は完工高が20億円あった建設会社が、今や4億円の完工高です。企業を存続させるため、無念の想いで賃金を下げ続けリストラするしかありません。ある大工さんは、月50~60万円の報酬が、今では必死に働いて20万円前後。「それでもまだいいほう。仕事がない同業者がよりは」と惨状を語っています。
では、どのように国は仕事を創っていけば良いのか。私は、農水・畜産業を再構築し、国内循環型の産業を創り上げるべきと考えます。これは地方から立ち上がって国を動かさなければなりません。
2009年現在、食料自給率は生産額ベースで70%です。まだまだ足りません。世界的な食料不足を踏まえ、国内自給率200%を目指すべきです。100%を超えた食料は、食料不足に苦しんでいる国へ援助するのです。農水・畜産業のノウハウについては、我が国は先代からの素晴らしい技術や手法が存在しています。これら先代から受け継いだノウハウを、崩壊寸前の日本経済の再興の旗手として活かすのです。
それには国家の保障をつけるという条件のもと、国民から出資を募って産業振興資金を捻出することが必要です。農水・畜産の産業を育成・推進させることで、食料不足は解消され、雇用が生まれ、ひいては地域経済が活性化されます。成長産業が本当に何なのか断言はできません。中小企業が再生し防衛できる策のひとつは、農水・畜産業において国家を挙げて振興することです。
<プロフィール>
崎田 松男(さきた まつお)
30年以上、地元・福岡で中小企業の再生・発展など総合的な視野で支援。資金繰りを改善し再生を図るだけではなく、有力な取引先を紹介。売上増への道筋をつけ、600社もの中小企業を甦らせた。「福岡における企業再生コンサルティングのパイオニア」と評されている。
<会社概要>
富士経営グループ
代表者:崎田 松男
所在地:福岡市中央区天神2-14-8
設 立:1976年10月
資本金:1億3,500万円
TEL:092-781-7300
URL:http://www.fujikeiei.net/
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