15日に告示された鹿児島県阿久根市・竹原信一市長の解職の是非を問う住民投票をめぐり、市長派議員で構成される「一新会」は、精力的な街頭演説活動を展開している。彼らをつき動かす阿久根市に対する想いとはどのようなものか――。
<一新会・石澤正彰市議>
「阿久根市民はだまされてきたのです!」。日が沈みゆく阿久根市の住宅地に訴えが響き渡った。演説の主は、阿久根市議会議員・石澤正彰氏。2009年3月22日に行なわれた市議選で、得票順では3番目となる1,029票を獲得し初当選。市議となった現在も市内でお好み焼き屋を営んでいる。
石澤氏が竹原市長に出会った当時、市議だった竹原市長は、北海道への所管事務調査に参加しなかったことで問責を受けた。そうした市議会に疑問を感じた石澤氏は、30名分の署名を集め、政務調査費と所管事務調査に関し、市議会へ陳情を行なった。
陳情を受けた市議会は「事情をお聞きしたい」と、署名した市民を市議会に呼び出した。石澤氏をはじめとする4人の市民は、ひとりずつ本会議の執行部席に座らされた。そして、陳情の内容に関し、議事運営委員会の委員(市議)たちは仕組みや制度がこうなっていると、一つひとつを説き伏せていった。「その様子を傍聴席にいる市議の知り合いの7、8人の市民が見ていた。さながら公開裁判のようだった」と石澤氏は振り返る。
「竹原市長を応援する人は"いじめの対象"となります」と、石澤氏は語る。陳情の際、取材を受けてテレビに映った。すると、経営するお好み焼き屋にぱったりと人が来なくなった。今、足繁く通う店の客は、市長を支持する市民ばかりだという。
石澤氏は一度、生まれ故郷の阿久根市を離れ、大阪でサラリーマン勤務をした。10年ほど前に帰郷した際、「こどものときと大人になってからでは、阿久根の印象にものすごいギャップを感じた」という。海や山、自然豊かな阿久根。一方で、市民の生活は疲弊し、平均年収の差が約500万円という官民格差が生じている。故郷に帰り、生計を立てるなかで石澤氏が感じた故郷の悲しい姿。次回、石澤氏が街頭で行なった街頭演説を紹介する。
※本シリーズは、他の報道で触れられていない鹿児島県阿久根市の竹原信一市長および、竹原市長を支持する市議や市民などにスポットをあて、阿久根市のもうひとつの側面をレポートしたものです。
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