先月のことになるが、福岡市内で開催された厚生労働省主催のセミナーを聴講した。来場者は80人程度にすぎなかったが、同じ内容のセミナーが東京では400人規模の来場者を集めている。この数字の違いは何からくるのか。セミナーに限らず、展示会でも同じである。福岡国際展示場で開催される展示会と東京ビッグサイトで開催される展示会を比較すればその違いは歴然としている。それは規模ではない。では質の違いなのだろうか、それとも地域差なのか、はたまた受け手の感度の違いなのか? 人口密度の違いと割り切ってしまえばそれまでだが、それは単なる数の問題ではなさそうな気もする。
地場の通販会社が今年、東京に営業所を開設した。同社の社長いわく「生きた情報は東京でしか得られない」。つまり、いくらインターネットやメールなどの情報インフラが発達しても、生きた情報はアナログな対話の中にしか生まれて来ないということらしい。だからこそ同社は東京に営業所を開設した。投資に踏み切るかどうかの決断も、やはり感度の差に左右されるのではなかろうか。
仮に受信感度の違いが入場者数の差に現われているのだとすれば、それは地方経済にとって致命傷ではないか? 福岡市民は、九州の他県に出向いたときに土地の住民の感度の悪さに優越感を抱くことはないか。それはコンプレックスの裏返しかもしれない。情報を必要としているかどうか、常にアンテナを立てているかどうかが問題なのであって、地域差が問題ではないと強がりたい思いだが、経済の中心をなす首都圏にはやはり感度を研ぎ澄ませたビジネスマンが多いのかもしれない。44%弱という福岡市長選における投票率の低調ぶりからもそれは察することができる。
かくいうデータ・マックスも、第1回目の展示会「ヘルスケアEXPO」を東京で開催することに決めた。動員数を考えたばあい、どうしても福岡での開催には踏み切ることができなかった。低感度エリアはビジネスチャンスを逃がす。福岡人よ、研ぎ澄ませたアンテナを立てた高感度人間たれ!
【田代 宏】
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