早いもので今年も師走に入った。年の瀬が迫れば何かと出費もかさ張り、財布の中身が心配になって来る季節である。にもかかわらず、年越しの準備に追われるなかで気もそぞろになりがちで、うっかり財布の紐もゆるみがちになる。
最近、以下のような「開運」とか「幸福」という文字を散りばめた一般紙への折込チラシがめっきり増えた。ゆく年くる年を間近に迎えて浮ついている消費者の射倖心を狙ったビジネスである。
同チラシは11月の全国紙に折り込まれた広告チラシの1枚だ。「黄金星座財布」とする1万9,800円の金運アップを標ぼうした開運財布である。所有者の星座がデザインされた「黄金星座財布」を持てば、その瞬間から金運が大好転するという。宝くじに当選して巨額な賞金を射止めた女性3人のほか、財布を購入したおかげでギャンブルでこしらえた多額の借金を完済することができたという男性の体験談など全6例が紹介されている。チラシには、「あなたの人生にも、金運と幸福が必ずやってくる!」との記載がある。
しかし待って欲しい。このような「大開運現象」という数少ない体験談を示し、あたかも誰もが同じ幸運(お金)をつかみとることができるかのような表示は「不当な顧客誘引」とみなされる恐れもある。同行為を禁じている景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)への抵触が心配される。景品表示法の運用指針
(公正取引委員会)のなかには、「商品・サービスの効果、性能に関する表示であって、神秘的内容(「開運」、「金運」等)に関する表示であっても、当該表示が一般消費者にとって、当該商品・サービス選択に際しての重要な判断基準となっていると考えられ、さらに、これらの表示内容に加えて具体的かつ著しい便益が主張されている(暗示されている場合も含む。)」ものは景品表示法第4条第1項第1号に該当するおそれがあり、同条第2項に基づき表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めるものとされている。
このチラシが折り込まれたのは全国的に名の通った4大紙の1つ。「あそこならば安心」と思うのは早計。紙面上に掲載される広告ならばともかく、折込チラシには新聞社のチェックはほとんど入らないからだ。折込チラシは事実上野放し状態にあるため、特定の地域をターゲットにしたこのようなチラシが後を絶たない。「来年こそは」と、人生の転機を待ち望む人はくれぐれも注意が必要である。
【田代 宏】
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景表法の運用指針
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