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特別取材

中小企業を取り巻く労務管理問題 休職に対する防衛策がポイント(下)
特別取材
2010年12月 4日 08:00

経営法律事務所北斗 代表弁護士 田畠 光一 氏

 最近、とくに中小企業にかかわる労働審判事件が増加している。福岡地裁では、労働審判がすでに120件以上申し立てられており、このペースだと年間140~150件ほどの事件数になると予想されている。労務管理問題は、事業規模や業種などに関係なく、企業に降りかかる問題である。労務管理問題を専門とする、経営法律事務所北斗の代表弁護士・田畠氏にアドバイスをいただいた。

<復職にあたっての問題点>

 精神的な傷病の場合の休職については、復職の判断の難しさがあげられます。たとえば、当初は個人的な問題でうつ病になり、そのために休職して治療を行なっていたとしても、本人の希望などによって本当は完治していないにもかかわらず復職させてしまった場合には、その後うつ病が再発すれば、今度は会社の責任によるものと言われかねません。また、復帰させるとしてもそのような理由から、「同じ職場(職種)にはできない」と考えれば、ほかに働ける場所を準備するということも考えなければなりません。
 なお、判例では「従前の業務には復帰できる状態ではないが、より軽易な職務に復帰させてほしいとの復帰の申し出があった場合について、労働契約上職種を限定していない場合には、会社は現実に配置可能な業務の有無を検討する義務があるとしたもの(大阪地裁、1999年10月4日判決)」があり、今では実務上、配置転換ができないのか否かは、訴訟になれば当然問われるところになっています。
 しかし、大企業であるならばともかく、中小企業では、そう簡単に余剰人員を抱えられる部署などあるわけはなく、実際には復職の希望を受けて、「はて困った」「どうしよう」と悩むことになることが多いのです。
 このように復職にあたっては、再発の可能性や職場の選定など、会社として考えるべきことが多くなります。そもそも休職にしてよいかどうか、最初の慎重な判断が求められますし、その際には復職させる場合への想像力の有無が重要になります。
 ところで、プライベートな悩みで精神的なトラブルを抱えている従業員は、それを見かねた会社側が休職させようと診察を受けさせても、「自分はそもそも病気ではない」と別の医師の診断書を持ってきたりすることがあります。このような場合には、無理やり休職させようにも問題になりそうで、対応に苦慮するところです。個人的な見解としては、そのような場合は本人の言い分を認めてあえて休職とはせず、あとは業務内容の結果に応じて普通解雇の要否を検討する方がいいのではないかと考えます。
 これまで述べてきた通り、従業員の精神的なトラブルについては、法的にスパッと切ることができない問題です。また、「メンタルヘルス」や「メンタルケア」といった事前の予防策を講じることぐらいしか、良い処方箋はなかなか無いという特徴があります。経営者として、そのような認識を持っていただきたいと思っております。

(了)

<プロフィール>
田畠 光一 氏田畠 光一(たばた こういち)
1998年、九州工業大学情報工学部機械システム工学科卒業後、「(株)日立製作所九州支社」に入社。05年10月、弁護士開業。「不二法律事務所」に入所。08年9月、九州大学ビジネススクールにてMBA(経営学修士)取得。10年4月、「経営法律事務所北斗」開業。


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