私は、DKホールディングスという新興上場企業の管理責任者を務めております。いや、務めていた、といったほうが正しいと思います。と、いうのも、当社は平成20年11月に民事再生法の適用を申請し、倒産してしまったからです。今は、存続させる事業についてはスポンサー会社に継承し、会社の残務処理を終えつつあります。
地元の銀行を中心に、数十億円のご迷惑をかけ、役員報酬を半減して民事再生に当たったわけですが、悔いてばかりはいられず、残された社員をなんとか救おうと、代理人弁護士の協力のもと、債権者であるいくつもの銀行と折衝を重ね、何とか残った社員全員の雇用を維持することができました。
もちろん、企業の経営に携わった立場として、倒産とはこのうえなく不名誉なことでもあります。いかにきれいごとをいおうとDKホールディングスは倒産したのです。企業の経営陣にとっては、結果がすべて。従って倒産は明らかに敗北であります。ゆえにこのような経緯は、胸に秘めておいたほうがよいのかもしれません。
反面、私自身も、倒産までの苦闘と、民事再生申立という決断、そしてその後の再生手続きと、もちろん代理人の弁護士と相談しながら進めるわけですが、とにかく情報がないなかでの手探りでの意思決定をして来ざるを得ませんでした。もちろん、法的なことは弁護士に聞けます。税務上の課題は税理士に相談できます。しかし、もう少し、企業の管理責任者として、倒産のときには何をなすべきか、というような実体験に基づいた情報がほしかったのですが、あまりありませんでした。
そういう情報のないなかで取り組んできたわけですが、振り返れば、一部事業の存続に成功し、ここまでたどり着けたものだと安堵する反面、ここでこうしておけばよかった、というような反省点もあります。でも、そういう反省も、もし私がまた次に勤務する先で民事再生をすれば別ですが(それは正直避けたいと思います)原則として活用されることはありません。しかし、それではあまりにももったいないと思います。
倒産した会社の反省は、倒産しないための教訓としても有用です。もちろん不幸にして民事再生を出さなければならないような状況に追い詰められたときに、他社がどのように取り組んだか、という事例には、そのような状況に直面せざるを得なくなった社長や管理担当役員にとって、何物にも変えがたい価値があると考えられます。社長や管理担当役員がそのようなノウハウの一端に触れることで、より会社としての戦略を持って民事再生に臨むことができ、債権者にも従業員にも、少しでも有利な再生計画を実行できるはずです。
そこで私は、サブプライムローン問題に端を発する金融恐慌をきっかけに、いかに地方の新興デベロッパーが倒産に追い込まれたか、そして、その後どのように民事再生手続きに取り組み、どのようにスポンサー会社への事業譲渡を果たしたか、そして、最後にどのように会社の幕引きを図ったかについて書き残すことを決意しました。
つたない文章ではありますが、このストーリーが、私と同じように不況と闘う企業の社長や管理担当役員、経理部長といった方々にとって、よき「転ばぬ先の杖」となりますよう、お祈り申し上げます。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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