この時期になると、多くのメディアが特集する「今年の○○」。
ここ数年目立った不景気に関する事柄や商品も今年は影を潜めた。
しかし、流通小売業の現場では、低価格訴求がなくなる気配はない。
来年は景気に二番底が来ると言う専門家もいるが、ここは発想を変えて
新たな戦略に取り組みたいものである。そこで提唱したいのが、
「環境対策とエコロジーストア」への転換である。
<エコロジーストアとは何か>
エコロジーの意味はわかっていても、実際に「小売りの現場で、どれだけエコロジーを数値的に実践しているか」と尋ねられれば、答えられる人は少ないのではないか。そこで重要になるのが、なぜ、小売業はエコロジーに取り組まなければならないかである。
たとえば、こう考えてほしい。もし、あなたがスーパーを経営しているとしたら、その使命は「お客さんが求める時に、求める商品を、求める価格と量で売る」ことである。
しかし、逆にお客が求めもせず、求められる商品も、求められる価格も量もなければ、それは全く売れていない店舗になる。冷蔵庫や保温機、照明に相当な電力を使い、生鮮や加工食品は相当数の廃棄を伴う。ムダなエネルギーを使い、多くのロスを出すことは、コストがかかるばかりで、エコロジーではない。
昨年、コンビニエンスストアで値引き販売が問題となった。加盟店は弁当やおにぎりを値引きして売った方がエコロジーに貢献すると行動した。しかし、本部は値引き販売を制限し、商品の廃棄を余儀なくさせた。そこで公正取引委員会は本部が加盟店の"自由行動"を制限するのは、「まかりならん」と排除命令を出したのである。
しかし、それで問題の本質が解決したわけではない。 本来、 値引き販売とエコロジーは、同次元で語れる問題ではないからだ。コンビニの目的は利便性である。それがスーパーのように値引き販売に走れば、収益を悪化させて経営を揺るがせかねない。
だから、値引きして販売するのではなく、店舗の立地や客層、消費環境に合わせて日々仮説を立て、仕入れや製造数量を決めるなど精度アップに取り組むことが先決なのである。
そして、売上げをアップさせ廃棄を減らすことが結果として、エコロジーや環境対策につながるのだ。ここまで来ると、スーパーや外食産業にも共通する経営論理と言えるだろう。
<小売システム自体の変革が必要>
小売業はこれまで大量に仕入れ、大量に販売することで、コストダウンを図り、利益を上げるという理屈で成り立ってきた。しかし、消費市場が成熟しオーバーストアとなった地域では売上げは減少している。そこではいくら店舗を増やしたところで、コストダウンも利益アップの望めない。
小売業の荒利益は過去10年ほどずっと下がってきており、店舗を出店すれば売上げが上がるという関係性は崩れつつある。ただ、小売業にとってすぐに出店を止めることはできない。一定の店舗数があってこそ、スケールメリットが生かせるからだ。それゆえ、経営者はこうした二律背反の問題に真剣に取り組まなければならないのである。
小売業の店舗をコンパクト化する動きは始まったばかりだ。しかし、企業そのものがダウンサイジングし、効率経営を進める動きは世界的なトレンドになっている。米国のビッグ3しかり、日本航空の法的整理しかり。資源には限りがあるのだから、先進国型のマス経済のシステムが行き止まるのは目に見えている。
そこでカギになるのが「資源循環型経済システム」だ。20世紀のような大量生産、大量販売による使い捨てではなく、そこに投入したエネルギーや資源を回収して再利用することで、資源を減らして新たに必要としないような取り組みである。
これはエコタウンへの脱皮を図る北九州市が取り組んでいるが、企業もライフスタイルアセスメントという製品やサービスに対する環境評価をしなければならない。ひとつの商品が原料から加工、物流、販売、消費、廃棄、再利用に至るプロセスで、環境に対しどのような影響を与えたか分析し、評価することである。
小売業が資源循環型経済を作り上げるのは重要な活動で、廃棄を減らすリデュース、再利用するリユース、再生産するリサイクルがキーワードになる。環境に配慮したゼロエミッションな小売りモデルとして、エコロジーストアがカギになるのである。
【釼 英雄】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら