(株)石村萬盛堂 代表取締役社長 石村 僐悟
<100年以上かけて醸成された 商品力と接客スキル>
平日の昼、天神ビル街のオフィスに「石村レディ」が訪れる。「株式会社 石村萬盛堂」自慢の銘菓やパンをひとつひとつ紹介するためだ。OL、サラリーマンは自分のお気に入りを次々と買い求める。
同社・代表取締役社長の石村僐悟氏は「待っているだけで商売できる時代ではない」と業界に先駆けて訪問宅配を始めた。役立ったのは100年以上かけて醸成された「イシムラ」ブランドだ。世知辛い世相になっても「萬盛堂です」といえばドアが開く。迎え入れたほうとしても、訪れた石村レディの明るさ、朗らかさに「さすが萬盛堂」と納得する。
現在は、住宅街担当を含め約40名の石村レディが在籍する。掴んでいる固定客はひとり約200名。合計で約8千名の顧客を獲得していることになる。石村社長は、これまでに切り開いた訪問販売の売り上げを通して、今後3年間で3倍に増える手ごたえを感じているという。
その一方で、そうした有望な市場には競合企業の参入も懸念される。しかし、石村社長は「それでいい」と意に介さない。「そもそもオフィスを訪問するお弁当屋さんが街中に氾濫しているのに、パンの訪問販売が全くないほうが不思議です」と、むしろ参入が当たり前のように思っている。
それは、これまでに築き上げた菓子の商品力と接客スキルへの絶対的な自信があるからだとも言える。しかし、これは自社のみの利益を追求するのでなく業界や周囲全体を思う心の表れに他ならないのだ。なぜならば、そうした考えが、石村社長の活動の機軸であるからだ。
<ロングセラー商品から見出したヒント
多くの人に愛されるマシュマロ作りへ>
2009年1月、石村社長は、岩田屋に"進化した"マシュマロ「ギモーヴ」の専門店「CHOUWARI(シュワリ)」を開業した。「ギモーヴ」は、口のなかでフワーっとひろがり、ほどけるように柔らかい食感が特長である。
同年の岩田屋におけるバレンタイン商戦では、全ブランドのなかでトップの実績をあげた。また、2010年3月の東京大丸におけるイベントの売上もトップであった。それでも、石村社長は満足していない。「リピーター数が期待した値に届いていない」と、「シュワリ」固定ファンの開拓に着手したのである。そのためのヒントは、メディアで活躍するメイクアップアーティスト・IKKO(イッコー)さんが与えてくれた。
IKKOさんは、「ギモーヴ」を食べるなり「マシュマロは嫌い」とだけコメントした。技術世界一を自負する商品でも、苦手な人にとっては同じマシュマロ。独特の食感もありすべての人がマシュマロを好きでないのは分かっていたが、率直な表現に石村社長は落胆した。ところが、IKKOさんの次のひと言に大きなショックを受けた。
なんと、「『鶴乃子』は別」と言って、パクパクと頬張ったのだ。聞けば昔から大好きだという。「鶴乃子」はマシュマロのなかに黄身餡を入れた創業期からの人気商品である。「マシュマロが苦手な人でも餡の配合などを研究すればおいしく食べてもらえる」。このとき、追及してきた「ギモーヴ」の可能性は大きく広がった。IKKOさん独特のアドバイスだと理解した。
また、そのひと言は、石村社長が萬盛堂の屋台骨を支えてきたロングセラー商品「鶴乃子」の根強い人気を再認識した瞬間でもあった。今後も石村社長は、マシュマロ製品の特長を活かす商品開発・改良に力を入れていくという。
<プロフィール>
石村 僐悟(いしむら ぜんご)
1967年、福岡県立修猷館高校卒業。71年、東京大学経済学部卒業。79年、3代目として「(株)石村萬盛堂」代表取締役社長に就任。その後、洋菓子ブランド「ボンサンク」の立ち上げと成功、ホワイトデーの提案など、自社のみならず業界全体における革新的な取り組みを行なってきた。趣味は、謡曲と読書。
<会社概要>
(株)石村萬盛堂
代表者:石村 僐悟
所在地:福岡市博多区須崎町2-1
設 立:1905年12月(創業)
資本金:3,600万円
TEL:092-291-5090
URL:http://www.ishimura.co.jp/
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