<エコストアはできることから実践>
では、小売業の環境対策、エコストアづくりは何から始めれば良いのか。あまりに多岐にわたるため必要な施策を整理し、できることから始めるのが現実的だ。
環境対策は店舗や施設といったハード面、商品、物流などのソフト面に分けられる。まず、できる限りコストをかけずにエコロジーストアを作るには施設の「改善」から手をつけることである。屋上や壁面の緑化、天窓などの外光利用である。
屋上緑化は直射日光を避けることができるので屋内の空調エネルギーを削減する効果は大だ。また、屋上や外壁、窓ガラスに塗って室内温度を下げる特殊塗料(ムライケミカルパックなど)も開発されている。
今年の夏、各地でキャンペーンとして行なわれた「打ち水」が気温下げる効果は、実証されている。屋外に散水したり、ミスト(霧)を発生させて、その気化熱で店舗や施設の温度を下げる設備もあるので、大いに検討したいところである。
また、新築や改築の段階で工法をエコ化する手法もある。断熱材を用いて建物の保温性を高めたり、環境負荷を抑えた素材を使用することで、使用エネルギーの削減を図れる。工法そのものが省力化されれば、建築コストも抑えることになり一石二鳥と言える。
ただ、根本はエネルギーを削減することだ。店舗や施設のエネルギー供給を変える手法として、オール電化や夜間電力の利用、ガスによる発電と廃熱を利用したコ・ジェネレーションシステムがある。
最近はLED照明の導入が進んでいる。9月に福岡県うきは市にオープンした「DSイズミ」は、オール電化やLEDはもちろん、 時間ごとに最適な照度を調整する調光設備、自然採光によるトップライトなどを導入。さらに冷凍冷蔵庫は省エネ化、消費電力の削減を目的に最新のインバータ化(電源回路変換装置)を施すなど、完全エコロジーストアとして運営されている。
<カーボンオフセット商品の投入>
何も莫大なハード投資をしろと言っているのではない。スタッフがこまめに店内やバックヤードの照明や空調のスイッチを消すだけでいいのだ。身近なことで取り組めるものはまだまだあるはずである。
一方、小売業の使命が商品販売であるとすれば、商品そのものからエコ化しなければならない。CO2の輩出削減の流れは製造業から始まり運送業界を経て、ついに小売業まで行き渡った。
だが、最後は消費者である。消費者がCO2を削減するような生活スタイルに変えなければ効果は出ないだろう。その意味で小売業が消費者に販売する「商品」も重要なのである。
メーカーもいろんなエコ商品を開発しているが、小売業としても売場やイベントなどを通じて、お客にアピールする必要がある。
最近、目立つのがカーボンオフセット商品。これは価格の一部をCO2排出権取引に用いるものだ。また、素材や製造の過程で、CO2排出のトータル量を示すカーボンフットプリント商品も登場している。
最後に廃棄食品の残さを堆肥や飼料にすること、ペットボトルや食品トレーの回収、再利用は不可欠。
レジ袋の削減も進んでいるようだが、まだまだ緒に就いたばかりで浸透するまではいっていない。それでも容器リサイクル法で店舗では容器包装廃棄物の排出抑制が義務づけられている。有料化やエコバックの利用などを合わせ、消費者にもっと意識喚起する必要があるだろう。
小売業の環境対策は、店舗ごとに、また各部門ごとにやれることは多い。部門責任者やパートスタッフが積極的に取り組むことが重要だ。実行する人がいなければ、効果は出ないし、現状を把握することで、対策も見えてくる。そこがエコロジーストアには肝心なのである。
【釼 英雄】
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