<レジ袋削減が温暖化防止につながるのか?>
テレビの人気番組に登場したことで、一気に注目が集まった武田邦彦中部大学教授の著書「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」シリーズ。ここで取り上げられているのがレジ袋だが、環境対策の上では当然、エコバッグとの両輪で考えていかなくてはならない。
レジ袋の削減が叫ばれるようになったのは、2000年以降。「容器包装リサイクル法」が完全施行されてからだ。少しでも捨てるゴミを減らしてリサイクルを進め、循環型の社会を実現するためである。
それゆえ、レジ袋削減は当初、地球温暖化防止を目的にするものではなかった。ところが、温暖化防止にはゴミを削減しなければならないというロジックに変わり、次第にレジ袋削減が温暖化防止に貢献するかのごとく語られるようになったのである。
武田教授は著書で「レジ袋は石油の余り物からできている」と主張し、テレビ番組でも「レジ袋を削減しても意味はない」を強調した。そのため、裏付けなど取らない視聴者の多くがこの理論を信用したようだ。しかし、実際のところはどうか。
反論としてレジ袋の原料は石油の余り物ではなく、石油から精製したナフサが正解である。原料が石油だから、製造時にCO2を排出するのは間違いない。従って、レジ袋の製造を抑えればCO2は削減され、地球温暖化の防止につながるというのが正論と言える。
ただ、ここで引っかかるのがレジ袋の変わりに「エコバッグ」を使ったからといって、地球温暖化防止、エコロジーにつながるのか、である。スーパーなどで販売されるエコバッグの多くが塩化ビニールもしくはポリエステル製。原料は石油で製造時にはCO2を排出するのだ。
<ゴミを減らせばCO2は確実に削減できる>
レジ袋を廃止し、国民一人ひとりが必ずエコバッグを使えば、CO2排出を抑えられる計算にはなるが、その科学的な根拠は示されていない。武田教授的に考えれば、エコバッグを使う方が多くの石油を消費するという理論も成り立ち、このままでは神学論争の域に入って、不毛な議論を続けるばかりである。
重要なことは科学的な数値やデータをもとに、レジ袋の削減やエコバッグの導入を考えた方が実りは多いということだ。環境省のサイト(我が家の環境大臣/エコファミリー・お知らせ)をみると、そこには 1枚10g(容量15リットル程度)のポリエチレンのレジ袋を1回使用して焼却する場合、1枚につき計31gのCO2が排出されると明記されている。
日本人がひとり当たり年間約300枚を廃棄すると計算して、CO2排出量は100t以上にも及ぶ。温暖化防止には削減するにこしたことはない。ただ、変わりにエコバッグを導入するにしても、石油を原料としたものを量産すると意味はない。綿製品など自然素材のものを需要に応じて製造すれば十分だ。
最近、街中で「DEAN&DELUCA」(ディーンアンドデルーカ)というロゴの入ったトートバッグをもつ20代から30代の女性をよく見かける。これは1973年に米国ニューヨークで誕生した高級食材店である。
日本ではファッションスタイルとしてバッグが浸透したが、同社がこのトートバッグを採用したのは食材の買い物に何度も利用してもらうためである。つまり、エコロジーを前提にしているのだ。
日本チェーンストア協会によると、今年3月にはレジ袋辞退率が25%に達する。これは自治体がゴミ削減のために、レジ袋の無料配布中止に取り組んだからと言われている。コンビニは参加しないし、中止しない自治体もあるが、ゴミを減らせば環境負荷を抑えられるのは間違いない。これを念頭に置いて努力することは、決してムダな取り組みではないはずである。
【釼 英雄】
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