12月5日、中洲大通り沿いの第6ラインビル7階にある「club月の雫」で、国際交流クリスマス・パーティーが開かれた。その日は日曜日。ほとんどの飲み屋が定休を取り、中洲がゴーストタウンと化す日である。小生にとっては週に1度の休肝日なのであるが、このイベントのチラシを見て、物珍しさからお邪魔した。聞けば、「定休日なのでボランティア団体に無償で店を貸した」という。
「club月の雫」は、中洲で4店舗、長崎、熊本でそれぞれ2店舗のキャバクラを経営するMLHグループの店。同店をタダで貸すだけでなく、社員とともにパーティーの運営に協力していたのが、同グループ社長の土屋英博氏だった。小生はすっかり意気投合、経営者・土屋氏の真意を探るため、後日インタビューを行なった。
19歳から中洲で働いている土屋氏は「今こそ中洲で、本当の価格破壊を起こしたい」と語った。7、8年前、従業員として働いていたキャバクラは、『30分1,500円』という激安の完全セット料金で大ブレイク。その後、追加料金があるニュークラブ、クラブと、客層に応じてキャバクラの種類も増えた。しかし、土屋氏は周期的に見て、再び激安セット料金の時代がくるとにらむ。
だが、直面している状況は、決して楽観視できるものではない。「ここ数年で接待が減っています。もっとも、全体的に客数は減っていますが、早い時間帯の割合が増えていますね。昔は11時がピークだったのが、今は10時前後です」と、土屋氏は分析している。
自身が経営するグループ店舗にとって大きな転機となったのは、1時閉店を厳守させる警察の厳しい取り締まりだ。中洲の店が開くのは午後8時がほとんどで、深夜2時の閉店が多かった。そして、中洲の常連にもそのような認識が定着している。
そうした状況にあった今年(2010年)、「与えられた条件でベストを尽くす」と、土屋氏は真っ先に7時開店を始めた。後から様子見で形だけオープンするような店も現れたが、土屋氏は全人員を午後7時から投入した。道路使用許可を取り、夕方6時からビラを配布した。「始めてからずっと赤字でした。何度も心が折れそうになりましたが、1年かけてようやく定着してきましたね」と、土屋氏は苦労を語る。
もちろん、ただ他所より早く店を開ければいいというものではない。土屋氏がこだわるのはサービスの質。「いかに低料金で付加価値をつけられるか」だ。「値段を下げるにも限界があります。逆に上はきりがない。安い料金でも高級クラブ並の満足度が得られるような"本当の価格破壊"を起こしたいんです」(土屋氏)。
グループ4店舗で働く女の子たちには、積極的に奉仕の『心』を磨く場を提供している。毎週火・木は、中洲大通り周辺をボランティアで清掃活動。「ボランティアは強制してはいけない」と自由参加だが、毎回数名の女の子が参加するという。
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MLHグループHP
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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