<いち早くエコに取り組んだ米国のウォルマート>
最近は企業でもエコや安全性を重視する考えとして、「サスティナビリティ」が語られるようになった。
これに早くから取り組むのが米国のウォルマートだ。当初は労働組合との摩擦から、クリーンな企業イメージをつくるためだった。しかし、時間をかけて施策を整えるなかで、同社は企業変革のひとつにこのサスティナビリティが必要であることに気づいた。
当然、同社がイニシアティブをとれば、取引する多くの企業にも波及していく。全米を走る大型トレーラーの70%はウォルマートの物流に関わっていると言われ、空気抵抗を抑える形状にするだけで燃費効率が上がり、米国のエネルギー削減にも貢献するという具合だ。
同社は「サスティナブル360」という目標を掲げ、再生可能エネルギーの使用を100%にする。破棄物を0にする。資源と環境を再生可能にする商品を販売するの3項目を設定。この目標を達成するため、それぞれ9〜17の「公約」に取り組んでいる。
たとえば、世界中の店舗と配送センターが排出する温室効果ガスを12年までに20%削減する。13年までにパッケージ送料を5%削減するというものだ。そして、この公約達成の方法を研究する機関を立ち上げた。
ここではエコロジーストアやパッケージ総量の削減を研究し、商品のトレーサビリティをチェックしたりしている。エコロジーストアではリーチインクーラー(ドア付き冷ケース)、LED照明付き冷ケースを完備。冷房効率をアップさせたり、消費電力の削減につなげている。
また、「パッケージ・スコア・カード」というエコ度を示す基準表を作っており、バイヤーは商品仕入れでこのカードを利用してパッケージを削減する。
バイヤー自身の評価にもエコの項目があり、同じ商品なエコ度の高い商品を仕入れた方が評価が高くなるという。世界一の小売業ウォルマートのエコロジー対策はそこまで進んでいるのである。
<安全・エコからフェアトレードへ進む英国>
2007年、英国の小売業界は「エコ宣言」をスタートさせた。国内で食料品やカジュアルウエアで「オーガニック(有機栽培)商品」を広げ、行政による環境対策が進むなかで、テスコとマークス&スペンサーは独自のエコロジー方針を発表した。
中でも、ファッションデザイナー・アニヤ・ハインドマーチと組んだスーパー・セインズベリーのエコバッグは、日本を含め世界中で社会現象を引き起こすなど、消費者に一番近い小売業のエコ対策が特別なものではなくなったことを証明した。
前年、テスコは500万ポンドを投資して「環境に優しいスーパーマーケットに向けての10か条」を貫く計画を発表。翌07年には約7万点の商品に生産・流通・消費の過程におけるCO2排出量を明記する方針を明らかにした。
さらに同社は同年春、デザイナーのキャサリン・ハムネットと組んだオーガニック&フェアトレード衣料ブランド「チューズ・ラブ」を発売。しかし、デザイナーが雑誌のインタビューで「フェアトレード商品としては販売が消極的で、企業イメージのアピールに過ぎない」と提携打ち切りを明らかにしたことで、ブランド販売は途絶えた。
それでも、08年にはTシャツやジーンズ、靴下の一部をフェアトレード生産に切り替え、自社ブランドからもオーガニックコットン商品を発売。環境やエコロジーに対する取り組みを「持続」させる企業姿勢は、少しも揺らいでいない。
百貨店のデベナムスも09年、フェアトレードコットンを使ったメンズカジュアルウエアを発売。英国の小売業界では一歩先んでて企業のエコロジー対策が定着し、次ぎなるオーガニックやフェアトレードの段階へと消費者の関心を集めている。
【釼 英雄】
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