辰巳開発（株）　代表取締役社長　今村　重記

＜価値が下がらない家、住宅団地＞

　北九州地区を中心に住宅開発を手掛けている辰巳開発株式会社（北九州市八幡西区、今村重記社長）が、創業30周年を迎えた。岡垣町の「ふる里どんぐり村」は、30年間の家づくり・住宅地開発の経験と、そこから導き出された理想の住宅団地の姿を実現させようとした、今村社長の集大成の事業でもある。
　「30年間、さまざまな住宅、団地を手掛ける中で、日本の住宅産業は大きく様変わりしてしまいました。私が一番懸念しているのが、家を守る、という考えをなくしてしまったことです。住宅の価値は30年でゼロになる、なんて、だれが決めたのでしょうか。家は消費財で、財産にならないなんて、おかしな話です。30年経ってもちゃんと住めるし、きちんと手入れされている家であれば、それなりの評価をすべきだと思います。家についての究極の満足は何かというと、値打ちが下がらないことです。団地でいえば値打ちが下がらない団地です。今の住宅は性能がいいですから、きちんとメンテをすればそれほど価値は下がりません。また、自分の家の庭だけでなく、通りや公園などの共用空間をみんなで手入れしていけば、住む人たちの中にも一体感が生まれ、緑豊かで、子どもたちやお年寄りも安心して住める街になります。そうすれば団地自体の価値も下がることはないはずです。いい街並みと、そこに住む人たちの豊かな暮らしがあれば、その住宅団地は地域としての魅力が高まります。そうすれば家の価値、団地の価値も下がることはないのです」

＜住む人たちの中から生まれる地域の文化＞

　ふる里どんぐり村は、大手住宅メーカーが手掛けながらも販売不振に陥っていたところを、今村社長が引き受けて10年前から再整備に取り組んだ。もともとは430区画だったものを300区画に変更し、１区画を大きくした。同じ規格の家を並べるのではなく、１軒１軒に個性を持たせた。オープン外構を取り入れたり、樹木をふんだんに取り入れた街並みづくりでは、公道部分の街路樹（ケヤキ）を辰巳開発が提供するなど、これまでの画一的な住宅団地とは異なる街並みをつくりだした。
　また、子どもが安心して家のまわりで遊ぶことができる「キッズパークタウン」や、林の中に家が点在するといった境界線を感じさせないイメージのエリア「団栗の家」、さらにはペットも安心して運動できるドッグパークなどの企画を盛り込んだ。
　究極の狙いは、そうした家や街並みを維持し、成長させていく過程で、住む人たちの中に新しい関係が生まれ、地域の文化が育つことだ。
　「庭木の手入れをしたり、家の前の道路の落ち葉をそうじしたり、そんなちょっとしたことから街の雰囲気は大きく変わっていきます。これは新しく開発される住宅団地だけではなく、すべての住宅、すべての地域にとっても同じことです。家を守る、という気持ちで、多くの人が家を大切にして暮らすことで、その町、その地域全体がよくなるのです。ですから、私たち住宅を提供する業者としても、売ってしまえばおしまい、ではなく、住む人たちと一緒になってできることを模索し、実行していかなければなりません。その家に住む人、地域の人の将来のことをしっかりと考えて、新しいふるさとづくりに取り組むことが、これからの住宅事業者の大きな責務であるといえるでしょう」。

＜プロフィール＞
今村　重記　（いまむら　しげき）
1949年福岡県生まれ。東筑高校卒業後、住友金属勤務、80年「辰巳開発（株）」を設立、2001年３月グループ各社の本社を現在地に移転。東筑高校ラグビー部OB会会長、地元の少年ラグビークラブのヘッドコーチとして活躍中。

＜会社概要＞
辰巳開発（株）
代表者：今村　重記
所在地：北九州市八幡西区幸神4-7-6
設　立：1980年８月
資本金：7000万円
ＴＥＬ：093-644-2500
ＵＲＬ：http://www.tatsumi.com/

※本稿は以下の書籍に掲載されています。

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