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福岡アジア経済特区構想がもたらす 九州、日本への影響とは(中)
特別取材
2010年12月21日 09:00

九州大学ビジネススクール 経済学研究院副研究員長 教授 村藤 功 氏

<福岡2大銀行への提言>

 ―先ほども名前が挙がりましたが、福銀と西銀はなかなかアジア戦略の構築作業が進んでいる状況とは言えず、九州域内で激しい金利競争を行なっていますが、このことはどうお考えになりますか。

九州大学ビジネススクール 経済学研究院副研究員長 教授 村藤 功 氏 村藤 もともと、福銀と西銀は国際銀行であったわけです。そこに不良債権処理という問題が発生したために、海外から撤退したという経緯があります。不良債権処理がほぼ完了して、国際銀行に必要な自己資本比率を回復した現在、先ほど申し上げた通り、再度海外に進出することを実行するべきだと思いますね。顧客が進出する場所に銀行が進出するのは、銀行のコア業務であるはずです。

 ―その考えを、福銀や西銀はどう捉えていると思いますか。

 村藤 結論から言うと、腰が重いですね。ビジネススクールに来る行員はみな同調するのですが、トップがそのように動いているとは思えません。この考えに同調する行員の方々はそれなりの数いらっしゃるのですが、本店がなかなか首を縦に振らない現状がありますね。

 ―この2行に限らず、地銀は今、顧客の囲い込みや金利競争に走りすぎている感はありますね。一方で、金融庁主導で行なわれている企業のリスケに関する円滑化法に対する取り組みなど、評価できる部分もあると思いますが。

 村藤 中央官庁から言われて皆がその方向を向くというのは過去のものですよね。円滑化法による中小企業支援自体は結構なことだと思います。しかし、東京の考えを実行するだけでなく、自分で九州や顧客企業のために必要なことを考えて実行することがもっと大事です。一時期盛り上がった道州制は、この点を克服できる仕組みだと思いますね。やはり自らが考え、行動するということをしない限り、九州はいつまでたっても成長しない日本の西の地方に過ぎません。
 九州は「九州ビジョン」や「九州の経済発展戦略」を持ち、その進捗管理も自ら行なうべきです。そういった意味でも、福銀や西銀には責任感を持って九州経済の発展を考えてもらい、顧客企業を支援してほしいです。

九州の進むべき道イメージ

(※クリックで拡大)

 ―いろいろな方々とお話をされて、理解を得られることは多々あると思われるアジア構想ですが、なぜ変化が生まれないのでしょうか。

 村藤 九大のビジネススクールに通う人たちは30歳台が中心です。この年代が、日本の企業組織で大きな決定権を持つことはまだ難しいです。そういう意味では、2年のビジネススクール生活を経てこの人たちがそれぞれの企業に戻ったときに、彼らの改革構想がすぐ企業のアジア戦略になるわけではありません。
 現在、50、60代の経営者の方々は、3-5年の中期計画を描くことはされていると思いますが、それより先の長期計画、白紙に絵を書いていくような作業に関しては、若い世代が十分に能力を発揮すべきであると思います。

 ―企業トップの思考は、なかなか変わらないということですかね。

 村藤 そうですね。自分が経営者としてやっていく先のことを構想するのは難しいかもしれません。この前、福岡証券取引所(以下、福証)の方とお話しする機会がありました。アジアの成長を取り込むために、「香港・上海・深圳インデックス・リンクト・ファンド」を福銀や西銀につくってもらって上場させたり、アジアの強大なインフラ建設に対して発行されるタイ・バーツ、インドネシア・ルピー、マレーシア・リンギなどアジアの現地通貨建社債に投資するアジア現地通貨ファンドを上場させたりしようと提案しましたが、反応は悪いですね。やろうと思えば、すぐできることなのですが。
 ここでも先ほどの福銀や西銀の話になるのですが、日本とくに九州企業のアジアでの成長を支えるという気概を持ったスーパーリージョナルバンクとして進出してほしいです。現在の駐在員事務所は融資、アドバイス、リスク管理支援などのサービスを行なうことができないし、事業損益をつけることができません。金融庁に国際銀行に戻りましたと仁義を切って、海外支店を出し、リサーチ、アドバイザリー、デリバティブといった顧客支援のコア業務をしっかりとやってほしいです。
 中国全体で戦うことは無理ですが、遼寧省や、黄海沿岸などの九州顧客企業がいけそうなところにはしっかり支店を出してほしいと思います。

(つづく)

【文・構成:神田 将秀】


<講師プロフィール>
村藤 功(むらふじ いさお)村藤 功(むらふじ いさお)
東大法卒、ロンドン・ビジネス・スクールMBA。ベイン、メロン銀行、CSファースト・ボストン、ペレグリンを経て、アンダーセンのパートナーへ。エンロン問題で、アンダーセンが崩壊してのち、ベリングポイント顧問を経てプライスウォーターハウスクーパースコンサルタントで2009年末まで顧問。03年4月から開設された九州大学のビジネススクールで企業財務、M&A、プロジェクト演習と国際連携担当教授。07年から中国の東北大学(瀋陽)客員教授。09年4月から産業マネジメント専攻長兼経済学研究院副研究院長。10年7月から(株)産学連携機構九州非常勤取締役。

<社会活動>
経済産業省主催の地域金融人材育成システム開発委員会(2003)と財務管理人材育成システム開発委員会(2004)の委員長。03~09年まで経済同友会会員。キンザイ・CFO協会:CFOプロフェッショナル検定企画・試験委員、銀行研修社:中堅中小企業CFO講座、金融検定協会、財務マネジメント部会委員。熱海市行財政改革会議委員。久留米市ガス事業譲渡先選定委員会・事業仕分委員会委員。行政刷新会議第2ワーキンググループ仕分人。糸島市行革推進委員会委員。大前研一氏主催のスカパーのビジネス・ブレークスルー・チャンネル(ch.757)で数番組放映後、コンテンツ委員会委員。06年KBC、07年からクロスFMのラジオ番組BBIQモーニングビジネススクールで金曜日の財務担当。

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