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福岡アジア経済特区構想がもたらす 九州、日本への影響とは(下)
特別取材
2010年12月22日 09:00

九州大学ビジネススクール 経済学研究院副研究員長 教授 村藤 功 氏

<九州、日本の取るべき道は>

 ―このような現状のなかで、九州の金融機関はどのような姿を目指すべきだと思いますか。また、アジア戦略を中心とした「九州の進むべき道」というものは、どのような方面へのアピールが必要になってくると思われますか。

 村藤 もし、九州が一体となって行動するということになってきた場合、九州全体の動きを支援する銀行が必要になってきます。今でも県や市町村単位が同じ事をそれぞれタコツボ的に勝手にやるのでは、行政の効率化が図れなくなってきています。広域化したほうが良い場合が増えているわけです。
 銀行も、今は各県を代表する地銀があり、それぞれ県のために競争しています。しかし長期的視点でみれば、必ず九州全体の立場を考えられる銀行が必要になるでしょう。
九州大学ビジネススクール 経済学研究院副研究員長 教授 村藤 功 氏 「九州の進むべき道」構想は、国や産業界が中心になって考えなければならない問題です。そこで九州経済産業局、九経連、九経調さんなどとともに研究していこうと思っています。また、QBSの卒業生(QAN: QBS Alumni Network)の地方自治体出身者を中心に公共経営(Public Management)研究会「QANP」という活動を行なっています。

 ―これまで九州のお話をうかがいましたが、日本はどうでしょうか。

 村藤 今回は九州にフォーカスを当てていますが、これまで「日本の進むべき道」についても考えてきました。バブル崩壊以降、民間や金融セクターはある程度の立ち直りを見せていますが、政府セクターは完全に立ち遅れています。税金と同規模の赤字国債を発行して予算をつくっていること自体、異常ですよね。サービスは今の世代が受けて、返済は将来の世代に払ってもらうという、いわゆる世代間不公平の問題があります。
 一般会計というのは、税金で組むという原則があるにも関わらず、借入をして賄っている。これを返済するためには、消費税を上げるか、景気を良くするしかないとよく言われています。しかし、それは間違いで、「民営化」という手法があります。
 財務省主導で数年前からつくっている中央政府連結貸借対照表を見ると、資産が700兆円以上、負債が1,000兆円以上で300兆円以上の債務超過状態です。資産が700兆円以上あるのなら、消費税を上げる前に資産や事業の売却をすべきです。しかし、資産の毎年の売却実績は1,000億円程度です。なぜかと言うと、遊休不動産の売却にしか手を付けていないからです。
 では、本当は何ができるのかというと、公営事業や公的金融機関の民営化・売却です。なかでも最も予算を使う部門が社会福祉サービスです。一時は箱物が槍玉に挙がっていましたが、近年ではこれはたいした金額ではありません。すでに国交省のインフラ整備事業に削減を求めるのではなく、厚労省管轄の社会福祉サービスを何とかしなくては国の再建ができない事態になっている訳です。
 この社会福祉サービスを、現在のようにすべて官で行なおうとすると消費税を上げなければならないことになりますから、規制緩和したうえで官・民分担でやればよいのです。ただ、これは公務員を非公務員化しなければなりませんから、官公労と戦わなければならず、現在の民主党では難しいと思います。

<事業仕分けで見えたもの>

 ―最後に、話は変わりますが村藤先生は昨年の事業仕分け人としてご活躍されました。その内容を教えて下さい。

 村藤 厚生労働省と経済産業省、外務省が担当でした。政府が行なっている仕事というものは、何千もある訳です。それだけの数があると、政治主導とはいっても官僚から上がってくる事項に対して受身の対応をすることくらいしかできません。また、財務省を怒らせると予算をつくれなくなるので、民主党は財務省と正面戦争ができないのです。
 事業仕分けでは、対応について個別項目ごとに財務省案が必ずつけられていました。財務省案にはもっともなものとそうでないものがあったので、財務省案の通りになったものと仕分け人が案を出してその通りになったものがありました。特別会計や特別行政法人に関しては、これを通じて現業をやっているものが多く、民主党が民営化を回避したために中途半端なかたちになったものが多かったと思います。今後の課題として残っています。

(了)

【文・構成:神田 将秀】


<講師プロフィール>
村藤 功(むらふじ いさお)村藤 功(むらふじ いさお)
東大法卒、ロンドン・ビジネス・スクールMBA。ベイン、メロン銀行、CSファースト・ボストン、ペレグリンを経て、アンダーセンのパートナーへ。エンロン問題で、アンダーセンが崩壊してのち、ベリングポイント顧問を経てプライスウォーターハウスクーパースコンサルタントで2009年末まで顧問。03年4月から開設された九州大学のビジネススクールで企業財務、M&A、プロジェクト演習と国際連携担当教授。07年から中国の東北大学(瀋陽)客員教授。09年4月から産業マネジメント専攻長兼経済学研究院副研究院長。10年7月から(株)産学連携機構九州非常勤取締役。

<社会活動>
経済産業省主催の地域金融人材育成システム開発委員会(2003)と財務管理人材育成システム開発委員会(2004)の委員長。03~09年まで経済同友会会員。キンザイ・CFO協会:CFOプロフェッショナル検定企画・試験委員、銀行研修社:中堅中小企業CFO講座、金融検定協会、財務マネジメント部会委員。熱海市行財政改革会議委員。久留米市ガス事業譲渡先選定委員会・事業仕分委員会委員。行政刷新会議第2ワーキンググループ仕分人。糸島市行革推進委員会委員。大前研一氏主催のスカパーのビジネス・ブレークスルー・チャンネル(ch.757)で数番組放映後、コンテンツ委員会委員。06年KBC、07年からクロスFMのラジオ番組BBIQモーニングビジネススクールで金曜日の財務担当。

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