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ダムは本当に要らないのか(4)~環境立国・日本への提言(2)
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2010年12月24日 08:00
工学博士 藤井 利治

 水源の安定をダムに求めてきた水道事業体の水利権について、もう少し詳しく見てみよう。水道事業は市町村の固有の事務で、ダム建設の補助金申請は厚生労働省健康局に行なうが、ダム建設や水利権の許可などは、国土交通省の指導監督下で行なわれる。
 福岡市は1978年と94年に300日に及ぶ給水制限を行なったが、給水制限は市民生活と経済活動に支障をもたらし、水道料金を減収させ、その費用の補填と水資源開発のために水道料金は値上げされ、市民に多大な出費を強いた。94年渇水の際、年当初の水道需給計画では、給水予定量に対し許可水利権量には4割強の余裕があり、誰もが給水制限になるとは予想していなかったが、実績として取水出来た量は、許可水利権量の半分以下しか確保できず、300日の給水制限を行なうことになった。
 許可水利権とは、新たにダムを建設する際、下流域の農業用水(慣行水利権)と河川維持用水を確保した上で、新規水利権量に必要なダム容量が確保されれば、安定取水出来る量として河川管理者から与えられる。ダムこの水利権は、利水安全度10分の1(10年に1回の渇水年)の渇水基準年をもとに与られるが、94年渇水は45カ年(河川流量データがある年数)で最も厳しい渇水年で、利水安全度は45分の1であった。ちなみに、わが国の利水安全度は10分の1とされているが、英国、オランダなどは50分の1、米国では既往最大渇水年で100分の1である。地震や洪水の確率値は、その都度、見直され、より安全な値となっているが、渇水時の利水安全度は10分の1で変っていない。また、既得水利権は10年毎に更新申請されるが、その水が使われている限りそのまま更新され、水利権量の見直しは行なわれない。
 この結果、水利権を取得した時の利水安全度10分の1の渇水基準年が、その後に発生した異常少雨、渇水によって利水安全度を2分の1(2年に1回の渇水年)までに減少させ、実際に取水出来ない水利権量を過大表示した状態にしている。

 新たな水利権は、どうして認められるのか。河川法施行規則第11条(水利使用の許可の申請)に基づいて行なわれるが、将来需要量が許可水利権量を超えると予測されれば、新たな水利権を申請することが認められる。将来需要量とは、給水人口にひとり一日給水量を掛け、漏水量等を加算して求めるが、人口は少子化等で伸び悩み、一人一日給水量は節水策(節水便器、洗濯機、節水コマなど)によって減少し、漏水量も配水管の布設換えなどによって減っているため、将来需要量が許可水利権量を上回る予測が出来なくなっている。
 水道統計によると、1991年から2007年までの16年間で、ひとり一日平均給水量は福岡市15%減、大阪市19%減、政令都市の平均で17%減と軒並み低下し、一日平均給水量も福岡市2%減、大阪市12%減、政令都市の平均で10%減と低下している。一日平均給水量の減割合が、一人一日平均給水量の減割合より低いのは、政令都市の給水人口が都市集中で若干なりとも増加していることに依る。近年の水道事業体は、少子高齢化と節水によって需要量が伸び悩み、結果として、新規のダム投資への参加意欲を失っていると云える。
 大阪市水道局では、他の政令都市より料金単価を安く抑え、ひとり当たりの給水量を多くすることで採算を確保してきたが、給水量の大幅な減は料金収入を圧迫し、大阪府水道部との経営統合で財政を立て直そうとしている。

(つづく)

【作者略歴】
藤井 利治(ふじい としはる)藤井 利治(ふじい としはる) 1944年(昭和19年)9月生まれ。九州大学工学部卒業。福岡市入庁後、福岡地区水道企業団理事、下水道局長、土木局長、水道事業管理者、福岡アジア都市研究所副理事長などを歴任する。2001年、渇水と節水をテーマにした論文で、福岡市職員では初となる工学博士号を取得。著書に『水を嵩(かさ)む』(文芸社刊)がある。


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