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特別取材

吉野家、新しいビジネスモデルの構築へ~安部修仁社長インタビュー(1)
特別取材
2010年12月27日 08:00

 ますます激しさを増す「牛丼戦争」。各社、価格競争はさることながら、オリジナルの商品やサービスを打ち出し、群雄割拠の業界を生き抜くために知恵を振り絞っている。そうしたなか、大転換の節目を迎えた(株)吉野家HD は、2010年4月に再び安部修仁氏が(株)吉野家の代表取締役社長に復帰し、陣頭指揮を執って巻き返しを図る。経営者としての魂を、いかに好業績に結びつけるか、その心中について話を聞いた。(聞き手:緒方 克美)

<分水嶺にある現状の課題とは>

 ―2010年は安部会長が社長に復帰するなど、吉野家にとって分岐点の年だったと思います。そのときの実績を踏まえて、今後の経営課題についてお聞かせ下さい。

安部修二社長 安部 2010年は、ホールディング会社になって3年目を迎えた年でした。ここ数年は、世代交代に備えてホールディング体制にして、事業会社の吉野家が子会社のマネージメントもあわせてやる、連結の吉野家を中心とする事業持株会社のような感じでした。その後、純粋な持株会社に移行して、世代交代の流れをつくっていこうとしましたが、当初の期待通りにはいかず、むしろバランスシート的にはダメージの方が大きかったと言えます。

 上期は、何より中心会社の吉野家が、他社さんの200円代の値下げという影響を受けましたので、既存店のダメージは、前年比で85%水準となりました。5%ダウンは今の消費環境からすると織り込んでいた水準なのですが、15%というのは想定を超えた急激な水準でした。中心軸の吉野家が揺らぐわけにはいかないので、2010年4月半ばの異例の社長復帰となったわけです。

 消費マーケットはマクロ的には人口減であれ、少子化であれ、全体のビジネスのシュリンクであれ、そういう想定のうえで未来への備えをしなければならないと痛感しています。

 1980年の倒産を契機に、再建のなかで吉野家のビジネスモデルは形成されてきました。2010年は、新生吉野家からちょうど30年という節目の年だったのです。この間、消費マーケットの構造は大きく変化しておりますが、とりわけ外食産業はその動きが顕著です。吉野家にとっては、ビジネスモデルを次世代に向けてまったく新しくつくり変える必要があると認識しています。

 過去の5年サイクルで起こる変化の節目とはまったく異なる大転換の節目であるとの認識にたって、2010年から2011年にかけての2年間で、きちんと準備しないといけない。これは中長期の課題にもなっています。

 緊急対策として、急激に落ち込んだ売上の回復です。また、中期的(3年)な課題は、過剰調整のマーケットに適用するオーバースペックの修正。そして長期的(5年)には、風景が変わった国内マーケットに適用するフォーマットモデルをきちんとつくり上げていく。このように、当面の課題、中期課題、長期課題の3つの異なるテーマを、昨年から今年にかけての2年間で答えを出さなければならないと考えております。

 今は、我々にとっては分水嶺にあるのです。ビジネスモデルを根本から見直していかなければならない、大転換の節目の時期という認識です。転換期ですから、トップダウンで私が陣頭指揮をとっていくことが重要だと認識しています。いろいろな批判は覚悟のうえです。

(つづく)

【文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
安部 修仁(あべ しゅうじ)
安部修二社長1949年福岡県生まれ。福岡県立香椎工業高校卒業後、プロのミュージシャンを目指し上京。音楽活動のかたわら、(株)吉野家でアルバイトとして勤務。その後、正社員として同社入社。77年、九州地区本部長を務め、80年の同社倒産後、83年に取締役として経営に参画。88年常務取締役、92年代表取締役社長に就任。07年グループ改組、10年4月より現職。主な著書として、東京大学・伊藤元重教授との共著『吉野家の経済学』(日経ビジネス人文庫)などがある。

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