小さな成功と失敗にこだわるな
大人げない大人で逆境時代を生き抜け
<日本経済は縮小均衡 これからの流れ>
―以前、別の取材で「ここ何十年間は経済が復活することはない」とおっしゃっていましたが、具体的にはどのように見ていらっしゃいますか。
成毛 これから日本経済は縮小均衡していくだけです。1回、国債入札で札割れを起こして円がメチャクチャ安くなって、IMFの監理下に入るか入らないかの寸前になる。そうなった瞬間に、3年間ほどとてつもないハメに陥って、4年後からいきなり復活するのでしょうが、それらのタイミングがいつかというのは分かりません。
30代の人たちにとって、それが30年後にくるとかなり痛いですよね。明日にでも来てくれた方がハッピーです。とは言え、日銀はそうならないように頑張るのでしょうね。
30歳の人の場合、5年間プータローしていても35歳からバリバリの経済成長期にあたります。だって1ドルが300円になれば、高度経済成長とバブルが同時にくるようなものですから。そうなると、外資系がこぞって日本に工場を建てて、たくさんの物を製造させることは目に見えています。人件費も向こうから見れば3分の1になるうえに、完成品は他国と比べて決定的にクオリティが違いますから。日本が世界の工場になるでしょうね。その瞬間から内需がとてつもないことになって、前のバブルの比ではないと思います。
そうなると、年代も何も関係なくなります。でも、本を読んでも読まなくても一緒になるから、皆読まなくなるでしょうね。
―そう考えると、我々30代というのは物心ついたころにはバブルが崩壊しており、高度経済成長というのをほとんど体験していません。その差は大きいかもしれませんね。
成毛 成長期を経験するかどうかは大きいかもしれませんね。だからと言って、なぜこんなに30代の皆が大人になってしまったのでしょうか。
―それは、先の見えない将来に漠とした不安を抱いていて、だからこそいろいろ勉強することで早く大人になろうとしたからではないでしょうか。
成毛 たしかにそうですね。ゴルフでも30代のトーナメントプロがそれだけで食っていけるかどうか分からないと、レッスンプロをしているくらいですし。どうしたことかと思っていましたが、1回も良い思いをしていないというのは大きいかもしれませんね。
今の30代は見ていて本当に気の毒で、日本始まって以来、かつてないほど仕事をさせられて忙しいと思います。その下の世代は、この世代の蓄積を使いながら「大人げない大人」になっていくと思います。救いようがあれば良いのですが、自分たちから何かするというのは難しいと思います。
【大根田 康介】
<プロフィール>
成毛 眞(なるけ まこと)
1955年北海道札幌市生まれ。北海道札幌西高等学校を経て、1979年中央大学商学部卒業。アスキーなどを経て86年にマイクロソフト(株)入社。91年より同社代表取締役社長。2000年に退社後、同年5月に投資コンサルティング会社(株)インスパイアを設立し、代表取締役社長に就任。08年より同社取締役ファウンダーに就任。現在、スルガ銀行(株)、(株)スクウェア・エニックス・ホールディングスの社外取締役や、さまざまなベンチャー企業の取締役・顧問などを兼職。早稲田大学客員教授も務める。『大人げない大人になれ!』(ダイヤモンド社)、『本は10冊同時に読め!』(三笠書房)、『成毛式実践マーケティング塾』(日本経済新聞社)など、著作・連載多数。
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