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特別取材

吉野家、新しいビジネスモデルの構築へ~安部修仁社長インタビュー(3)
特別取材
2010年12月29日 08:00

<問われる「安心感」と4つのキーワード>

 ―将来の備えとして売上規模が小さくても、十分に利益がとれる店づくりを模索するということですね。なかでも吉野家らしさというか、こだわりの店をつくっていかなければならないと思いますが、いかがですか。

安部修二社長 安部 利益を抑えるモデル店舗を確立するには、多岐にわたり派生的に広がってしまったメニューの構成や、バランスを欠いた価格構成を見直して、これらのポジショニングをきちんと整合性のあるものに修正していかなければならないと考えております。これをキーワードで表すと、「清潔感」、「開放感」、「機能性」、「エコロジー」の4つに集約されます。そして、今問われているのは「安心感」だと思います。逆に言えば、不安をどう払拭するかに対するアプローチですから、その根拠を確立し訴求していく必要があります。
 
 長期レンジの次世代型のモデル店舗については、「機能性」を考慮した店づくりを考えていきたいですね。お客さまが、吉野家の将来に期待する姿を先取りしたものです。これを実現できれば、客数が増え、売上アップにつながるでしょう。

 また、オープンキッチンのようなかたちでお客さまに対して可視化するといった、単にハード面を変えるというだけではなく、「安心感」を与えるというサプライサイドとしての姿勢も変えていく必要があるでしょう。

 外食産業に携わる者として、加工工程や保管方法、調理工程を含めて安全を確保するのは必須条件です。これをクリアできなければ、商売をたたまないといけない。ただし、安全・安心をサプライサイドからインフォメーションすることの矛盾もあります。お客さまの立場からすればメンタリティの部分もありますから、どう感じるか、アプローチの方法が大事になると思います。私は隠さない、すべて見せる、そのうえで清潔感を与え、素材の加工工程が見えるということが、安心感を醸成する1つの技術論でありアプローチ方法だと思います。

 また開放感は、店づくりのハード面のオペレーションの技術論、今までの延長ではないノウハウをどうつくるかが大事です。そこにフィックスさせるのが清潔感ではないでしょうか。と同時に、企業的で合理的でないといけない。コスト負荷をかけてやるわけにはいかないですから、「機能性」に裏打ちされたもので実現していかないといけません。

 さらに、人件費以外の水道・光熱費つまりエネルギーコストは、固定費は別にして、変動費でいうと人件費の次に負担が大きいコストです。これを最小に抑えるということは、すなわち環境面に配慮したエコロジックな取り組みとなります。これは今すぐ取り組むべき課題ですが、設備投資費がかかりますので、5年先を読みながら研究を進めていきたいと考えています。

 好例が、自動車のモーターショーです。あそこに出品する車は今すぐに普及する実用車としてよりも、未来カーを先取りしたものですよね。これと同じで、将来のために今から実験していかなくてはならない。普遍化できるものから、順次取り入れていく。これは5年レンジの取り組みです。

 環境適応型の店づくり、水資源、電気エネルギー、ガスエネルギー、排水設備などパーツごとに完成度を高めていく。そして、システムとして整合性のあるものを1つのパッケージとして完成させなければならないと考えています。ですから、短期課題の売上の底上げ、損益分岐点を下げて利益を確保する、そして未来へ向けてモデルチェンジしていく、これらを2011年から本格的に展開していきたいと考えています。

(つづく)

【文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
安部 修仁(あべ しゅうじ)
安部修二社長1949年福岡県生まれ。福岡県立香椎工業高校卒業後、プロのミュージシャンを目指し上京。音楽活動のかたわら、(株)吉野家でアルバイトとして勤務。その後、正社員として同社入社。77年、九州地区本部長を務め、80年の同社倒産後、83年に取締役として経営に参画。88年常務取締役、92年代表取締役社長に就任。07年グループ改組、10年4月より現職。主な著書として、東京大学・伊藤元重教授との共著『吉野家の経済学』(日経ビジネス人文庫)などがある。

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