<問われる顧客とのエンゲージメント>
―たしかに福岡でも若手の経営者やサラリーマンはソーシャルメディアを積極的に使っていますが、既存の中小・零細企業はまだまだ使いこなせていないところも多いと思います。
佐々木 ツイッターは誰かが「つぶやき」と超訳してしまって、暇つぶしに「ランチなう」とか書くだけのサービスとよく誤解されます。ツイッターマーケティングが流行っているため、企業で公式アカウントをとっても、どうでもいいことをつぶやいて、しかも企業のアカウントなのにフォロワー数が1,000ちょっとしかないという寂しい状況になっているところがたくさんあります。これは100%間違っています。
ツイッターというのは強力なマーケティングツールです。必要なのは、ひとつは自分たちの持っている専門性を外部化することで多くの人たちに広めて評価をしてもらう。もうひとつは、顧客とのロイヤリティですね。買った人の感想などは検索できるわけですから、自分のところの製品が使われていたらすかさずお礼を言うことで、顧客との間で新しいエンゲージメントをつくっていく。それをきちんと理解しないといけません。
エンゲージメントというのは、日本語で「婚約関係」とも言うように、お互いの顔がきちんと見えて、そこに何か継続的な関係性が持続するということ。その方向で考えると、それはもうツイッターやフェイスブックのようなソーシャルメディアでしかあり得ないわけです。
宣伝・広報の世界というのが劇的に変わりつつあって、昔は広告と言えばテレビや新聞などのマスメディアで流れていました。しかし、一方通行的な広告を消費者は誰も信用しなくなり、消費者の側から見ると、自分が信頼できるような人から流れてくる情報をきちんと信用しようとする、ある種情報を流す側とエンゲージメントをつくるということがすごく大事になっています。
結局、マスメディアの広告が衰退し、そのあとに出てくるエンゲージメントという概念を維持するためのツールとしてソーシャルメディアがあるという考え方です。そのためにフォロワー数を増やすわけですが、ただ増やせばいいというわけでもありません。何もしないで製品紹介するだけでは、フォロワー数も増えるわけがありませんから、自分からいろいろな人たちに働きかけるように参加していくことが大事です。
【大根田 康介】
<プロフィール>
佐々木 俊尚(ささき としなお)
1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部中退。88年毎日新聞社入社。99年アスキーに移籍し、『月刊アスキー』編集部デスク。03年退職し、現在フリージャーナリストとして主にIT・ネット分野を精力的に取材する。総務省「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」委員。「2011年 新聞・テレビ消滅」「Google グーグル」「電子書籍の衝撃」など著書多数。
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