<すべては市長の責任>
―たしかに福岡市は、そういった実験ができる規模ですね。ただし、これまで「首長には経営能力が必要だ」と主張してきましたが、市長の理想を具体的に落とし込むにはブレーンが必要だと思います。なかなか市職員だけでできる話ではないのではないですか。
高島市長 「外から見たほうがなかのことが良く見える」といいます。事実、「福岡ってこんなにいいところがあるのに...」と、県外、遠方からいらっしゃった方ほどおっしゃいます。その意味では、外からのアドバイスを十分参考にすべきです。
一方、市職員の方とお話してみると能力がものすごく高く、とにかく感心しています。しかし、責任が覆いかぶさるとなると、新たなチャレンジを怖がってしまう。たとえば、待機児童の話にしても、スピード感をもってやることができません。施設の建設・新築が間に合わないのであれば、公立だけじゃなく私立の保育園にも、5人の子を見ることができる『保育ママ』をひとりずつサポートすれば、ずい分の数のこどもたちに対応することができます。ただ、一気に増やすと「何かがあって困る」と...。
公約には掲げていませんでしたが、私は選挙期間中に何度も「給食のパンの持ち帰りはいいじゃないか」という話をしてきました。むしろ、食べていいのか悪いのかを見分ける能力を身に着けることが大事だと。しかし、『万が一』を優先させて大きなほうを捨ててしまっているところが多いと思うのです。だから市職員には、まず「私のせいにしていいから」と言っています。
―そこがポイントですね。本当に市職員には有能な方がいらっしゃる。しかし、市OBから「今までで最も働かない副市長が、責任を取りたくないから職員の能力を抑えてきた」と言われています。市職員のやる気を高めて、まとめあげるような人材が必要ではないですか。
高島市長 副市長人事に関しては、いろいろな憶測がありましたが、自分自身としては、お会いしたことのない方を、人からの評判だけで評価するのは良くないと思いまして、まずは「春までサポートして下さい」と、お願いしました。新体制については、これから考えていこうと思います。ただし、私自身は責任をとる気満々です。実際に4年に1回、審判(選挙)を受けるわけですからいいんです。全部、私のせいで。
たとえば、待機児童解消のために保育ママの人数を増やし、何件か問題が発生したとします。それは"私の責任"です。そして4年後に選挙があります。そこで「高島がおかしい」となれば、私が落選します。それは私が望まれていなかった人間ということですから、また別のことをすればいいと思っています。
「そんなことをしていたら次は当選しないぞ」とか「次に当選したかったらこうしろ」という声をよく耳にします。別に「1期でやめる」とか、そういうつもりで言っているわけではありませんが、1期のうちにやることを全部やってしまわないと審判は受けられません。正直にやってきたことに対して審判を受けて、「続けさせたほうがいい」と思われれば、私は全力で自分のやり方をやります。
―つまり、不完全燃焼は、福岡市民に対する裏切り行為であると。この4年間は精一杯やってみると。それはいい姿勢ですね。
<プロフィール>
高島 宗一郎 (たかしま そういちろう)
1974年(昭和49年)11月1日生まれ。93年、大分舞鶴高校卒。97年、獨協大学法学部卒。97年、九州朝日放送株式会社入社。2010年10月、同社を退社し、11月14日投開票の福岡市長選挙に立候補。20万9,532票を獲得し当選。12月7日、第35代福岡市長に就任した。
※1高島市長の「高」ははしごだか。
※2インタビューの文章は、主なやりとりについて内容を整理したものです。
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