国内の中小企業を取り巻く金融環境の厳しさは、日に日に増していっている状態である。今回、各方面にてご活躍中の4名の方々に、座談会というかたちで金融行政のあり方について討論していただいた。現在の金融行政および金融機関に対する提言や厳しい意見などが多数出され、業界環境の問題点を鋭く突くものとなった。
<北九州銀行への反応>
―北九州銀行(以下、北九銀)設立における影響について、お聞かせ下さい。
A氏 弊社のある山口県内ではあまり影響というものは感じませんね。しかし福岡銀行が、山口県内において積極的な営業を行なっているということは聞きます。
青木 北九銀が設立されることについて、地場企業の期待は2つに集約されていると思います。1つは金利で、もう1つは融資が出るのかということ。
間違いのないことは、北九銀が設立されることによって、北九州の金融マーケットにおいて金利競争がますます激化するということです。この金利競争は、地場企業を育成していこうという観点がまったく見えません。「A銀行が出すなら、B銀行も出す」という銀行間競争を行なっているだけです。この設立を機に、本来の長期安定的な資金供給ができる金融機関としての使命を感じ、そして与信先企業からは、適正な金利を確保していただきたいですね。
西田 私は九州新幹線と似ていると思います。名前ばかりが先行して、実際開業してみるとさほど大きなインパクトはない。山口銀行が名前を変えて北九銀を設立した要因というのは、個人のマーケットを意識した行為であるわけで、企業金融における設立メリットがどの程度あるのかということは計りがたいですよね。期待先行であるがゆえの設立後の落胆ということも、企業側からすればあると思います。
井手 福岡市内の企業経営者にヒアリングしたのですが、結論を言うと「静観」ということです。「かたちがはっきり見えてこない」、「関心はあるが、過剰な期待もしていない」というスタンスの声を多く聞きました。
―今回、弊社が行なった北九銀のアンケートについても、回答率、内容ともに若干関心が低いというか、様子見感はありました。次に、金融機関の提案営業についてのご意見をいただきたいと思います。
A氏 当社の取引銀行である山口銀行や商工中金等は、きっちりとした提案をしてきます。信用金庫も提案ということで受けたりしますが、やはりそこには内容の差異がありますね。
青木 今の金融機関は、フィービジネス(いわゆる預り資産業務)に走りすぎの感があります。「銀行員は忙しい」―まさに、この部分が強く影響していると思います。行員は、かなり細分化された商品のノルマを課せられています。そのなかで、提案営業というものを金融機関がどう捉えているのかというと、「ビジネスマッチング」といって商談を成立させるノルマ項目を設けたり、金融機関主催のビジネスフェアに何社出展させ、何件商談を成立させたか、ということがノルマになっています。金融機関における行員レベルの提案営業とは、それを達成することを意味しています。
結果として、提案営業の位置付けとしては、顧客のロイヤリティ向上という目標を掲げているにもかかわらず、そのプロセスはノルマに縛られた評価主義の制度設計で運用されています。現状レベルの金融機関の提案営業は、マーケットからの理解はさほど得られていないと思います。
―たしかに、銀行員のノルマを課す形態はかなりのプレッシャーを感じるでしょうし、自らの業務、対顧客に対しても、少なからず悪影響を与えている部分はあるでしょうね。
西田 かつて金融機関系のシンクタンクがたくさんありましたが、第三セクター絡みの仕事がメインでした。しかし、今の状況だととてもやっていけずに、次々に撤退していきました。
そこで何をやったかというと、経営コンサルティングを標榜した取り組みです。これは名前ばかりの部分が多く、実際にやっていることといえば、企業の社員研修であったりするわけです。こういったものはほかに任せて、たとえば公共と民間を繋ぎ合わせるビジネスを行なうなど、地元金融機関であるからこそできるコンサルティングを行なって欲しいですね。
【文・構成:神田 将秀】
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