国内の中小企業を取り巻く金融環境の厳しさは、日に日に増していっている状態である。今回、各方面にてご活躍中の4名の方々に、座談会というかたちで金融行政のあり方について討論していただいた。現在の金融行政および金融機関に対する提言や厳しい意見などが多数出され、業界環境の問題点を鋭く突くものとなった。
<原点への回帰を>
―そのほか、何か意見はありますか。
西田 本来であれば、金融機関によるリレバンの機能強化、地域密着金融ができているという前提のもとに、円滑化法が出てきたはずです。しかし、現状を分析する限り、リレバンの機能強化ということ自体が、果たせていないように思います。金融業界や行政は、リレバンのシステムに関して自画自賛する向きも見られますが、それをもう一度問い直す時期に来ているのではないでしょうか。
そもそもリレバンの出発点は、大手行の不良債権半減目標を打ち出したときに、地方金融機関は大手行とはビジネスモデルが違いすぎるため、大手行のような外科手術ではなく、漢方薬を処方して自ら治癒していくというような不良債権処理モデルであったはずです。
しかし、無担保融資やスコアリングモデルのローンの推進を行なうなど、当初モデルのなかにリレバンとの関連性の薄い要素を詰め込みすぎた結果、リレバンの機能強化そのものが図れず、今日に至っているのが現状だと思います。この見直しは、早く行なわなければなりません。
青木 金融機関の行員に対する一定のノルマ設定などは、止むを得ないと考えます。しかし総論として、ここまでの預り資産手数料獲得における営業推進は、何よりも銀行員のモチベーションを低下させ、本来ならば中小企業のコンサルティング機能にその能力を発揮できる力が、役務収益の獲得に投下されています。
明確に申し上げますが、市場は金融機関に、投信や生保の営業推進などを望んではいません。今、中小零細企業が金融機関に求めていることは、少なくとも今以上に自社のビジネスを知ってもらい、銀行のコンサルティング機能とファイナンス機能のもと、「イノベーション」を創造することです。融資と投資は違いますが、間接金融として可能な支援の在り様は、数多いと考えます。
「100年に1度の大恐慌」とたとえられる経済の異常事態に、銀行が好景気時と同様に投信と保険を売って、地方銀行の使命である「地域経済の発展」に寄与することができるでしょうか。マーケットの真のニーズを汲み取り、銀行自体のビジネスモデルの変革を行なっていただきたいと思います。
借手側のニーズは、07年を境に明確に変化しています。銀行にとっての「持続可能なビジネスモデル」とは、与信先との共存共栄であり、「育成型金融」に帰結されると考えます。原点回帰し、この本来的な機能を発揮していただきたいと、強く願います。
―本日は、さまざまな分野からのご意見ありがとうございます。今回の討論会内容は、行政を含めてさまざまな金融機関に対するシグナルとして発表してまいりたいと思います。
【文・構成:神田 将秀】
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