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日本のベトナム原発受注 鳩山由紀夫と森喜朗が果たしたのは(上)
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2010年12月 3日 11:00

 アジア諸国を始めとする世界の原発傾斜をにらみ、原発先進国間で激しいセールス戦が展開されている。目下、ロシアや韓国の攻勢が目立つが、日本もこのほどベトナムへの売り込みに成功した。そこで注目されているのが、2人の元首相の動き。民主、自民の2人の"過去の人"が、国際原発商戦に参入する狙いとその影響力は?

<加熱する国際原発商戦>

 中国やインドをはじめ、東南アジアから西南アジア、さらに中東まで、アジアを中心に世界各国で原発計画が目白押しだ。
 石油依存脱却と経済成長にともなう電力需要を原発でまかなう算段だが、各国をその気にさせ、後押ししているのが日本を始めとする原発先進国。自国での受注が鈍ってくるとともに、各国の原子力産業界は海外に活路を求めてきた。
 とくに、原発未導入の途上国へ自国の原子炉と技術を輸出すれば、その後の増設はもとより、ほかの途上国への売り込みでもアドバンテージを得られる。日本もタイやベトナム、インドネシアなど主に東南アジアを中心に、数年前からセミナーを開いたり、研修生受け入れなどで各国への浸透を図ってきた。
 そんな日本の原子力業界の意は、政権交代後の民主党にも引き継がれている。鳩山由紀夫、菅直人両政権ともに「原発と新幹線」を柱とするインフラ輸出を成長戦略に据え、トップセールスもいとわない姿勢を見せており、その有力なターゲットの一つがベトナムだった。
 しかし、未導入国への原発商戦で先行したのは、ロシアと韓国。昨年12月、ロシアはベトナムから、韓国はUAE(アラブ首長国連邦)からそれぞれ受注に成功した。当然、日本も両国への売り込みを図っており、それなりに有力視されていたのだが、初戦でつまずいた。

<トップセールスの重要性>
 「ロシアのベトナムへの売り込みは、極めて戦略的」と言うのは、ロシアを中心とする国際政治が専門の東京財団研究員の畔蒜泰助氏。同氏は11月16日に東京財団が主催した『APEC後の国際関係』のシンポジウムで、講師の1人として出席。台頭する中国をにらんだ米国のアジア回帰を指摘する米国専門家に続き、畔蒜氏はロシアのベトナム進出は中国を牽制、対抗する日米露提携にもつながることを指摘した。
 ロシアがベトナムから原発受注できたのは、潜水艦6隻とその港湾整備などのインフラとワンパッケージでの売り込み、それにプーチン首相によるベトナム首脳へのトップセールスの成果と見られている。南沙諸島、西沙諸島の領有権をめぐって、常に中国の脅威にさらされているベトナムへのテコ入れという、かゆいところに手が届く商法だ。
 しかし、ロシアにとってベトナムとの関係緊密化は、ビジネス以上に近年弱まった太平洋やアジアでの影響力回復という戦略的外交でもある。
 一方、まだ原発先進国と言えるかどうかが疑問の韓国が、日本やフランスを押しのけてUAEから受注できたのはどうしてか。家電から自動車まで、品質・価格ともに日本を凌駕する勢いの今の韓国企業そのまま、価格は日本の半値だったと言われる。そして、ロシア同様、李明博大統領のトップセールスが効いたとされる。
 2連敗の日本が、ここにきてロシアに次いでベトナムから受注できたのは、ロシアの第1期工事2基分に続く第2期工事の2基分。ベトナムは2020年初頭にトータル4基400万キロワットの発電を目指し、まず同国中部で1期工事、次いで南部で2期工事に着手する予定だからだ。
 ロシア、韓国に敗退した日本は、改めてトップセールスを含めた官民一体での売り込みの必要性に気づき、3月に鳩山首相がベトナムのグエン・タン・ズン首相へ親書を送る一方、業界も(社)原子力産業協会や企業グループを新会社に一本化することを構想。そこへ政府が出資して、官民一体化の国際原子力開発(株)(JINED)の設立に着手した。
 同社は武黒一郎東京電力フェローを代表に、株主は東京電力(20%)、関西電力(15%)、中部電力(10%)以下、北海道、東北、北陸、中国、四国、九州(各5%)の9電力会社。それに原子炉メーカーの三菱重工、日立製作所、東芝(各5%)の3社と、原発当事者が勢ぞろい。これに、官民出資の投資ファンド(株)産業革新機構が10%出資し、10月22日に正式発足させた。

(つづく)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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