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吉野家、新しいビジネスモデルの構築へ~安部修仁社長インタビュー(4)
特別取材
2010年12月30日 08:00

<何を目標にし 何をして実現すべきか>

 ―店舗の話と関係しますが、商品戦略として牛鍋丼を投入されました。現状と今後の方向性はいかがでしょうか。

安部修二社長 安部 2010年5月10日から6店舗で実験をスタートさせました。毎月店舗数を増やしながら、8月時点でその数は100店を超えるまでになりました。成果としては、客数は2割増、売上と粗利高で1割増となりました。

 9月は前年を上回りましたが、10月、11月は、一昨年のセールスプロモーションの押し上げ効果との比較で100%を割りましたが、想定した水準である客数2割増、売上1割増は上回っています。とは言え、既存店が15%割れしていましたから、売上が10%回復では5%の前年割れということになります。ただ、実験の成果は着実に伸びているというのが実態です。

 当初、赤字を見通していた上期決算は、減収増益となり、経常利益の段階では黒字転換しました。9月以降の下期は、さらに急激に回復しています。2010年四半期ベースでは、第1四半期が赤字、第2四半期は黒字、第3四半期はさらに黒字幅が増え、そして12月から2011年2月の第4四半期はさらなる増加を見込んでいます。

 当社は2010年では第1四半期がボトムでしたが、そこからは急ピッチで売上を伸ばしているというのが現状です。

 ―上期のデータを拝見すると、キャッシュフローがプラスに改善しているようですが、マスコミはあまりこの点に触れていません。

 安部 やはり、マスコミとしては「牛丼戦争」という土俵をつくりたいし、そのなかで「勝った」「負けた」という色分けをする傾向があるのではないでしょうか。それは仕方ありませんし、割り切っています。もちろん、既存店の前年比は、マーケットにいかに適応しているのかという物差しで、重要な指標の1つには違いありません。

 しかし、目標に対していかに進捗しているか、これが我々の最大の関心事です。前年比で売上が多いとか少ないとかは、バロメーターの1つではありますが、あまりそれに振り回されないようにしたいと思います。

 これは社員にも常々言っていますが、私自身に言い聞かせていることでもあります。むしろ、トップである私が感情をしっかりコントロールしていかなければならない。何を目標にし、実現のために何をすべきか。この点を明確にして、常にその進捗状況を点検し自己評価していくことが重要です。

(つづく)

【文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
安部 修仁(あべ しゅうじ)
安部修二社長1949年福岡県生まれ。福岡県立香椎工業高校卒業後、プロのミュージシャンを目指し上京。音楽活動のかたわら、(株)吉野家でアルバイトとして勤務。その後、正社員として同社入社。77年、九州地区本部長を務め、80年の同社倒産後、83年に取締役として経営に参画。88年常務取締役、92年代表取締役社長に就任。07年グループ改組、10年4月より現職。主な著書として、東京大学・伊藤元重教授との共著『吉野家の経済学』(日経ビジネス人文庫)などがある。

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