26日、鹿児島県阿久根市で、市選挙管理委員会(市選管)に提出されていた市議会へのリコール(解散請求)署名の縦覧が終わった。署名に対する異議申し立ては計611件。すべて無効になったとしても、本請求に必要な署名数(有権者の3分の1)を上回ることから、議会解散の是非を問う住民投票の実施は確実となった。来年(2011年)の2月から3月に実施される見通しだ。
その過程にあった23日、選管事務局長への公務執行妨害で男性1名が逮捕されるという事件が起きた。選管事務局長は、NET-IBニュースでインタビューを行なった元群馬県警警部補で裏金問題を内部告発した大河原宗平氏。現在は、総務課長も兼任している。
事件発生時、大河原氏は、縦覧会場の入り口で選管職員の監督を行なっていた。そのとき、飲食業60代男性がいったん会場を出た後に引き返し、大河原氏のネームプレートがよく見えないとして、大河原氏の上着のなかへ手を突っ込み、ネームプレートを引っ張り出した。その後、その男性は「よそ者」といったおよそ職務に関係ない批判を大河原氏に行なった。そして、すれ違い際に大河原氏へ肩をぶつけた。
公務執行妨害ということで、大河原氏が建物の外で男性を逮捕。捕まえられた手をふりほどこうと抵抗していた男性は、徐々に力を加えられるなかで観念したという。
しかしながら、この事件は氷山の一角。同署名縦覧は無秩序を極めていた。市民の目撃情報によると、署名簿の中身を携帯電話による写真撮影で記録する者がいた。署名簿は漏洩があってはならない個人情報の固まり。一体、何を目的とした行動なのだろうか。他方で、縦覧が始まった後、署名活動に関する脅迫めいた電話がかかってきた市民もいるという。
来年(2011年)1月16日投開票の阿久根市長選挙へ向け、対立する市民同士の溝がさらに深まっていくものと思われる。真二つに割れた要因のひとつは官民格差、そして既得権益を持つ者と持たざる者の完全な二層社会であると言えよう。人口約2万4千人の阿久根市の混乱は、日本全体の地方自治体にも警鐘を鳴らしている。
【山下 康太】
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