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特別取材

吉野家、新しいビジネスモデルの構築へ~安部修仁社長インタビュー(7)
特別取材
2011年1月 2日 08:00

<「決意と執着心」が新しい価値を生む>

 ―ところで、海外戦略の今後はどのようにお考えですか。

安部修二社長 安部 筆頭は中国でしょう。中国市場では、香港を含めて250店舗を展開しています。そのほか、すでに台湾、シンガポール、フィリピン、タイなどで展開しており、アジア全体を視野に入れていきたいと思っています。

 2009年に取り組んだのは、インドネシアのジャカルタです。ここは経済成長、近代化が著しい地域で、グローバルに見ると、海外の方がマーケットポテンシャルは高いですから、出店数、売上規模は国内よりもアジア市場の方が大きくなることは十分に予想されます。そういう意味で、経営資源のシフティングは大きな課題だと思っています。

 ―団塊の世代の経営者はしぶとさや粘り強さが感じられますが、30代、40代の若い経営者はあっさりしていると指摘されます。最後に、日本の次代を担う若い経営者にアドバイスをひと言お願いします。

 安部 個人差もあるでしょうが、団塊世代は生まれつき競争環境のなかで生きてきた世代だと言えます。競争社会が当たり前ですから、競争自体に面白味を見出している人も多いのではないでしょうか。事業で成功している人の共通点は、やはり価値を創りあげるまでの段階として、何度も試行錯誤を重ねていることです。こうした人は、諦めない、不屈の精神が旺盛だと言えます。

 1つの事業計画を立てて、目標に向かって動き出したとき、思わぬ問題や壁が立ちはだかることもあります。しかし、シュリンクしても恐れないという姿勢が大事です。別の言い方をすれば、「決意と執着心」です。

 もちろん、昔と今とでは環境も違います。社会が刹那的になっている部分もありますし、管理過剰になっている面も否めません。

 2010年、社長に復帰して分かったことですが、残念ながら当社もオーバースペックになっている部分がかなり見られました。システム1つ導入するにしても、生産的な意味があるか、どのような価値を生み出しているか、経済効果はどうかということを、現場の社員が把握していないという場面に遭遇しました。ある意味、物事に対して淡白になっているのかもしれません。理屈先行で、経験不足という面もあるでしょう。

 しかし、私の経験から言えば、合理性に欠く不条理な体験が後々になって意味があったと気づくことが多々あります。与えられた仕事を全力で取り組む姿勢は大事ですし、周りの人間も真剣だから協力しようという気持ちになり、信頼を寄せるようになります。自分にとって利益にならない仕事でも、全力で取り組む人を私は信頼します。一見ムダのような行為でも、何か新しい価値を生み出す場合もありますので、今置かれた現実の場で頑張ってほしいですね。

(了)

【文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
安部 修仁(あべ しゅうじ)
安部修二社長1949年福岡県生まれ。福岡県立香椎工業高校卒業後、プロのミュージシャンを目指し上京。音楽活動のかたわら、(株)吉野家でアルバイトとして勤務。その後、正社員として同社入社。77年、九州地区本部長を務め、80年の同社倒産後、83年に取締役として経営に参画。88年常務取締役、92年代表取締役社長に就任。07年グループ改組、10年4月より現職。主な著書として、東京大学・伊藤元重教授との共著『吉野家の経済学』(日経ビジネス人文庫)などがある。

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