福岡大学 工学部建築学科 教授 須貝 高
<日射による最上階での遮熱対策>
近年の異常気象により、地球全体で急激な気候の変化が起きています。今年の夏は平均気温が戦後最高とも言われる猛暑により、熱射病で倒れる人が続出しました。環境の変化に十分耐えられるよう建物に工夫をして対策をとらなければ、住んでいる人間が最大の犠牲者になってしまいます。とくに高齢者や乳幼児など、身体が弱い方々に配慮した住まいづくりが必要です。
夏の場合、怖いのは西からの日射と最上階です。夏場は西側に窓がある場合、西日対策を徹底してやらなければ、室内の温度は非常に高くなます。高齢者の場合は、血液循環が悪くなっているため身体からの放熱がうまくいかず、自分で気づかないうちに体温が上昇して、建物内で倒れる危険性があります。西日対策としては、日射を遮蔽するためすだれやブラインドなどを利用するのですが、その際、太陽が低いため、横型では室内が暗くなってしまうので縦型のルーバーを設けることです。縦型であれば、日射を遮ると同時に風を送り込むことができます。
集合住宅等の建物の最上階で、断熱がされていない場合も怖いです。昼間、太陽の熱が屋根に当たると非常に温度が高くなり、屋根表面部では60度にまで上がります。そうすると、屋根から天井に熱が入り、輻射熱(空気をパスして天井から人体へ移動する熱)によって夜になっても人体の温度が下がらず、暑くて非常に寝苦しい状態になってしまいます。また、福岡都市部ではヒートアイランド現象により、日中に建物や地面のコンクリートに蓄えられた熱が夜間に放出され、熱帯夜が続いている状況です。対策としては、建物の最上階に緑を設けることです。緑化することで、土そのものの断熱性に加え、緑の葉からの水蒸気により温度が下がります。すると、最上階であっても室内の気温が下がってくるのです。このように、猛暑対策がきちんとされていれば、室内では最小のエネルギーで生活でき、屋上に上がれば緑や花を観賞できるという楽しみも感じられます。
また、地熱の利用も有効です。冬場になると床が冷えるため、脳卒中や心臓病が懸念されます。基礎断熱(基礎コンクリートの床下側に断熱材を入れる。床下換気はしない)を徹底し、1年を通して安定した温度を保つ地熱を床下に入れることにより、夏は涼しく、冬は暖かい環境となります。
<快適ではなく「健康」>
私は快適であることを求めるのではなく、自分たちの命が長く保てるかどうかという、「健康」という観点で考えていくことが重要だと考えています。室内温度は18度がいいか22度がいいかなどという快適さを議論する前に、夏は猛暑に対する対処を、冬は冷えに対する対処を行ない、安心して健康に暮らしていくことのできる住まいづくりをしていくことが必要です。日本の場合、春夏秋冬に加えて梅雨の時期もあり、カビや湿気等の問題も出てきます。これらのさまざまな問題に対し、どのような対策を行なっていくかを考えなければなりません。とくに、抵抗力が弱くなっている高齢者や乳幼児などに配慮した住宅をつくることです。一番大切なことは、人間にとって、健康でいられる住宅をつくっていくということではないでしょうか。
<プロフィール>
須貝 高 (すがい たかし)
1947年9月生まれ。76年3月 東京大学工学系研究科博士課程修了、工学博士取得。 76年4月 東京大学建築学科環境講座文部教官。92年4月 福岡大学工学部建築学科教授に着任、現在にいたる。
<学校概要>
福岡大学
所在地:福岡市城南区七隈8-19-1
創 立:1934年4月
TEL:092-871-6631
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp/
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