座は沈黙してしまった。私も、このような情緒的な話では、結論など出せるはずがないと思ったので、取りまとめに入った。
「まず、増員せずともオーナー担当を実質増強できるように考えませんか。たとえば、社内異動でオーナー担当を精鋭部隊にすれば、同じ人数でもかなり増強されるはずですよね。それに、オーナー担当は後発の部隊なもので既存の各課から相当の雑用を押し付けられているような話も聞きます。オーナーから、営繕で自分の知り合いの業者を使うから、といわれてオーナー担当が終日立ち会っていたら当社には何の収益も入らず大赤字ですよ。だから、そういうただ働き方をやめて、各課からの雑用も各課に戻せば、実質的には相当の戦力増になると思います。少なくとも、忙しさにかまけて安易な増員をすることだけは避けましょうよ」
と私。
その後5月に入りオーナー担当の課長から、個人的に相談を受けた。上司から無理を言われて困っているので、もう一度プロジェクト体制でオーナー担当業務の再構築を進めてほしいというようなことだった。しかし、私は既に管理本部長として決算・財務から開示まで広範な対応をせざるを得ない立場であったし、このようなプロジェクトは物件の売却および資金繰と比較すればはるかに優先順位が下がることであったので、再度このプロジェクトを自ら仕切ることはできなかった。ただ、
「江口常務とよく相談して、昨年度の契約更改プロジェクトと同様の手法で再構築を図っていってごらん、ぼくも必要な相談には乗るから」
というところまでしか言えなかった。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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