<地域の目線だけでは 気づかない魅力も>
坂口 ただ、行政にしても地域住民にしても、魅力に気がついていない人が多いようにも思えます。外国からも人が呼び込めるような立地、優位性があることに、気がついていないのです。それをどうやって気づかせるかは、大きな問題だと思います。
佐藤 おっしゃることは実感として理解できます。先祖代々住んでいる方々は、隣近所とある意味で共通の価値観を持っています。一種の伝統を守っているのですが、その伝統が何のためにあるのかということについては、すでにわからなくなっているケースもままあるのです。そのローカルルールのために、外から見たら排他的に見えることもあるように感じます。
辻 それほど高い垣根はないという気もしますが、たしかに核心の部分に触れさせないという感じはありますね。きっと、ずっと一緒に住んでいる人との気心が知れた信頼関係が、外部の人が来ることによってちょっと揺らぐかもしれないという不安感があるのではないでしょうか。それゆえ、排他的に見えるような行動をとってしまうこともあると思います。
坂口 糸島は島なんです。島のコミュニティが奇跡的に残っているのだと思います。近所で結婚しあって、みんな親戚に(笑)。そこにポーンと他所から引っ越してくると、「お客さん」になります。この関係はずっと、たぶん100年経っても変わらず、お客さんはお客さんのままだと思います。そういう面はたしかにあります。
しかし、このコミュニティをずっと存続させるためにいろいろなお祭りがあったり、仕事を一緒にやったりと、地域で交流を盛んにやっているのです。これは、都市部では考えられない安心を得られます。閉鎖的なコミュニティという面もありますが、深い関係が築けるという、うらやましい面もありますね。
ニック 糸島にはまだ週末だけしか行けていませんが、うちの隣には親切な農家の方がいらっしゃいます。我が家はまだ井戸が完成しておらず、水が使えません。そこで、それでは不自由だろうと、その方が水を分けてくれているのです。どんな地域性かというのは、つまるところ人によるのではないでしょうか。一般的な話で、日本人か外国人か、関西人か関東人かなどは、言い切れないように思います。
辻 たしかに、一括りにはできないですね。
(つづく)
【柳 茂嘉】
<参加者> | |
(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏 |
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九州大学大学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻 感性融合デザインセンター教授 坂口 光一 氏 |
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(有)フクオカ・ナウ 代表取締役 ニック・サーズ 氏 |
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九州大学大学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻修士課程 辻 桂子 氏 |
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