<景観にもっと配慮を! 自然は大きな資産>
ニック 私が大変心配しているのは、大好きな糸島の人気が出すぎて、発展が変な方向に行ってしまうことです。立地の良さを利用して、金儲けだけのために環境を壊すということをしてしまわないか。経済的発展というのは生活者にはとても重要なことだと思いますが、やり方を間違えないでほしいですね。糸島は、「ない」ことが良さのひとつなのですから。
辻 景観や自然は、町の大きな資産ですからね。
ニック 町の景観に対して、もっと配慮すべきだと思います。たとえば、九大の新キャンパスに電柱と電線は似合わないと思います。せっかく新しくつくるのですから、土中に埋めた方がずっと美しく仕上がったのにと残念に思いますね。
辻 ヨーロッパの街並みは美しいと感じます。美観が統一されていると言いますか、デザインがまとまっていることが美しい街をつくっているのではないかと思います。
ニック 日本では、道路で自動販売機をよく見かけます。ヨーロッパには、あまりありません。これは都市条例などのルールで、景観を乱さないように努力しているからです。そして気になると言えば、看板です。日本は看板が多すぎます。これが景観を乱してしまっているのです。同じ色系統やデザインを用いることで、町の価値はもっと上がるのではないでしょうか。景色が財産という認識をもっと深めてほしいですね。
坂口 条例のように上から押し付けるのではなく、地域ごとに自主ルールをつくるのもいいと思います。
佐藤 正直に言いますと、JR沿線と国道202号から看板を全部なくせということはできないでしょう。そこだけは最低限認めるようにするというような、メリハリも必要と思います。少なくとも生活圏のなかから看板なりを取り除こうという動きが起こって、それがモデルになって広がってくれたらいいですね。条例などのように上から規制するのではなく、自発的にやると美しい話にもなりますし。
ニック 糸島の人気が高まって、二見ヶ浦あたりに環境に配慮が足りない大きなホテルや人工物ができてしまったら、町の価値がずいぶんと下がってしまうと思います。そういうところには、先手を打って配慮しておく必要はありますね。
辻 地域を保全するということですね。自然は未開地ではなく、自然として開拓されているのだと認識してほしいものです。自己主張の強い看板は一過的には売上が上がるかもしれないですが、長期的には地域の価値が下がって行き詰まってしまいます。このことに気がついてほしいです。
(つづく)
【柳 茂嘉】
<参加者> | |
(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏 |
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九州大学大学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻 感性融合デザインセンター教授 坂口 光一 氏 |
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(有)フクオカ・ナウ 代表取締役 ニック・サーズ 氏 |
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九州大学大学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻修士課程 辻 桂子 氏 |
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