（株）命根や 代表取締役 白坂 道也
＜自分でつくったものは自分で売りたい＞
私は、熊本県芦北町で水稲を作っていた農家の長男です。もの心つく頃から、父から「お前は日本一の農家になれ」と言われ続けました。
父は農業の神様と言われる松田喜一さんの門下生の一人で、その父から農業のあり方を教え込まれ、６歳で耕運機を動かすほどに成長しました。そのような少年時代を過ごすなかで、育っていく作物を見て生命の尊さを学ぶとともに収穫の喜びを味わっていました。
これまで私は、農協に頼らない、自分でつくったものは自分で販売するという農業を心がけてまいりました。
以前、地鶏も飼っておりまして、無添加の卵をつくったことがあります。その卵の販売を農協に依頼したことがあったのですが、特殊な卵ということもあり、思うように売れませんでした。そこで、「人任せではいけない、自分でつくったものは自分で売らなくてはだめだ」と考えるようになったのです。
加えて、国の減反政策への疑問もあります。年間70万トン以上の米を輸入している一方で、国内の農家は減反をすすめられる。これはどうにも納得がいきません。
私は食に携わる者として、健康問題の根本は『米離れ』にあると考えています。米の消費は約20年前と比べて半減しています。一人あたり以前は120キロ、今では48キロしか食べません。これが健康を害する一因だと思います。米を食べる場をつくり、健康に貢献したい、その思いから６年前に出店を決意したのです。
＜健康には地産池消と季節のものを＞
人の遺伝子は120歳まで生きられるようにプログラムされています。それが生活習慣、特に食習慣とストレスで短くされてしまうのです。戦後、食生活の欧米化がすすみ、米を食べなくなりました。けれども、日本人に適した食事は日本で古来食されてきたものだと思います。地域で採れたものを地域で食べること。これが健康には一番大事です。
また、季節に合ったものを食べることも重要です。たとえばコーヒーやバナナといった食品は体を冷やし、冷えは免疫機能を低下させます。すると大きな病気を患いやすくなります。人間の体温は36.5度で、これは年中変わることはありません。日本に住む日本人なら、夏はスイカや夏野菜を食べて体温を下げ、冬は根菜を食べて体温を上げるようにすることが大事だと思います。そもそも昔の食生活というのは理に適っているのです。暑い季節に体を冷やし、寒い季節に暖める、そういうものを食べていたのです。
私は体があってこその企業だと思っています。体のことをいたわりながら仕事をやっていかないといけないのではないでしょうか。健康でいるからこそ仕事ができます。今食べているものは体にいいのか、という視点を常に忘れずにいることが重要だと思います。
私の店では食を提供するだけでなく、日本人の心に刻まれている心象風景も提供しています。内装は障子があり梁が出ている古民家のようにして、お母さんのぬくもりを感じられるようにしています。食とともに癒しも得られる空間にしたかったのです。
＜プロフィール＞
白坂 道也（しらさか・みちや）
熊本県芦北町の農家の長男として生まれる。農業を通じて食の大切さを知り、現在、農業、企業経営のほか、「農と食のセミナー」主宰、日本食伝承アドバイザー、スタイルFMコメンテーターとして幅広く活躍中。
＜会社概要＞
（株）命根や
「米にteaサロン 峠の玄氣屋」
代表者：白坂 道也
所在地：福岡市中央区天神1-7-11 イムズB1F
ＴＥＬ：092-718-0511
ＵＲＬ：http://www.ims.co.jp/restaurant/detail/?shopNo=052
※本稿は以下の書籍に掲載されています。
このたび、弊社では「愛する福岡へ 201人の提言」を発刊いたしました。内容は、政治、経済、学界の有識者および福岡・九州で活躍する企業経営者が、それぞれの立場から福岡の未来に対する提言集となっております。本著には、以下でご説明するさまざまな活用法がございます。
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