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瀬戸内に浮かぶ「アートの楽園」直島~脈々と受け継ぐグランドデザイン(3)
自立する地域社会
2011年1月 8日 08:00

<古来より続く 温かい島民気質>

 「人の温かさ」―これも、直島の魅力のひとつである。
 かつて讃岐へ配流される途中に立ち寄った崇徳上皇が、島民の純真素朴さを賞して「直島」と命名したという逸話が残されているように、離島という閉鎖的な空間であるにも関わらず、この島の人々は実に温かい。
直島(本村) たとえば、困っている観光客がいれば積極的に声をかけて助け、何か尋ねられれば丁寧に応対する。道ばたで観光客に港までの道を尋ねられれば、単に教えるだけではなく帰りの船の時間を聞いて、「歩いていては間に合わない」となれば快く車で港まで送る。民宿では、たとえ夜間に飛び入りで外国人が訪ねてきても、空き部屋があれば快く迎え入れる。小学生の子どもでさえ、外国人に対しても物怖じせず案内役を買って出るという。
 実際に取材で直島を訪れた際、くしくも島内の各店が定休日のため昼食どころに困っていたところ、とある路地裏のカフェの店員が声をかけて招き入れてくれた。また、島内を歩き回っているときにも、あたかも登山客同士が山中でするかのように、観光客同士が互いに挨拶を交わす光景もよく見かけた。まるで島民の温かさが観光客にも伝播し、直島全体を包み込んでいるかのようだった。
 直島の本村地区でカフェ「コンニチハ」を営む波多信治さんも、そんな直島の温かさに惹かれた1人。「以前は会社勤めをしていたのですが、今夏よりこの島でカフェを開いています。この島の魅力はやはり、『人との出会い』です。カフェの店名も、そんな人との出会いを意識して『コンニチハ』と名付けました」と語る。
「和cafeぐぅ」のメンバー。全列右が久岡さん 同じく本村地区で「和caféぐぅ」を営んでいるのは、実は香川大学の「直島プロジェクト」の学生たち。副リーダーの久岡奈津美さんは、「私たちは学生の集まりですが、地域の方と交流しながら土日限定でカフェを運営したり、メンバーのなかにはボランティアガイドに参加している人もいます。地域の方にもよくしてもらっていますし、もっと交流を深めていって、直島を元気のある島にしていく手助けをしていきたいですね」と話す。
 愛知県から友達と2人で直島に観光に訪れていた岡本さんは、「今回初めて直島を訪れたのですが、とても良いところですね。アート作品がすごいのはもちろんなのですが、道端でのやり取りやお店に入ったときの対応などに、地元の人の温かさをすごく感じます。時間の流れをゆっくりと感じられ、何となくリフレッシュできるような気がします」と島を訪れた感想を語ってくれた。外部から訪れた人にも、直島町役場総務課 課長補佐 山上 美香 氏この島の温かさはきちんと伝わっているようだ。
 直島町役場総務課の山上美香氏の話では、「昔から三菱マテリアル㈱の製錬所がある関係で、島外から転勤で直島に来る人も多いです。そういった方を迎え入れるような地域の土壌が育まれているので、観光客などの島外から来る人に対しても、きさくで寛容な島民が多いようです」とのこと。
 古来の逸話から現代に至るまで脈々と続いている「人の温かさ」も、この島の大きな魅力であることは間違いない。

(つづく)

【坂田 憲治】

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