<人口の捉え方を変えて 流動的に人を増やす工夫を>
坂口 景観を守ること、地域の価値を高めることは、町の問題解決にもつながると思います。これは糸島に限らず、どこの町でも言える問題点の代表が「人口減」と「高齢化」です。私はこの問題を解決するためには、人口の考え方を変える必要があると思っています。
まず、人口を3つに分類します。1つは定住人口。家を持ちそこに暮らす人が、これに当たります。2つ目は滞在人口。別荘も含めて年に1カ月、2カ月とその町で暮らす人たちです。3つ目は観光人口。観光に訪れる人たちの数です。滞在と観光の人口をモビリティ人口と呼んでいます。これまでは人口というと、定住人口だけを指していました。税金を納めてくれる人、子どもを産んでくれる人だけをカウントしていたのです。そうではなくて、町に関与する人たちもカウントすべきだと思います。定住はストック、モビリティはフローと言ったら、わかりやすいかもしれません。
佐藤 モビリティ人口を増やすためには、多くの人に来てもらうための魅力ある町づくりが大切になりますね。糸島の場合は、温泉が出るわけでも、全国区で売り出せる名物があるわけでもありません。こういった従来型の観光という考え方でモビリティ人口を増やすとなると、「?」がついてしまいます。けれども、観光の概念を変えて、たとえば自転車で走ったり、海を見てボーっとしたりといった、いわゆる観光とは別の意味での観光資源というのは、糸島にはたくさんあると思います。
坂口 たとえば、糸島は軽トラック保有率が極めて高いんです。これを逆手にとって、軽トラックを使ってパフォーマンスをする「Kトラフィーバー」(主催・糸島わはは)が行なわれました。荷台にいろいろな商品を並べて、移動店舗の完成です。こういうことで街の活性化をしたいという若者が、アイデアを持ち寄って楽しみながら活動してくれています。
辻 軽トラックならば、載せるものを変えるだけでいろいろなお店やステージになりますね。すばらしいアイデアです。物を載せるのに良い車ですが、使おうと思えば通勤にも使えますし(笑)。
ニック 何かをやろうと思ったときに、それができる余地が糸島にはあります。場所的にもそうですし、仕組み的にもできる可能性があるのです。これはとてもラッキーなことだと思います。ちなみに私の将来の夢は、軽トラに乗ることなんですよ(笑)。
佐藤 軽トラック以外でも、たとえば音楽イベントなどはお寺や喫茶店など糸島各地でさまざまに開催されています。こういうイベントが個々に開催されているのですが、とりまとめていくというのも大切かもしれませんね。
辻 取材をしていても、グループとしてまとまっていないと感じることがあります。これらの活動がまとまってくれて、糸島がクリエイティブな町として注目を浴びるようになれば、活性につながる可能性はありますね。農業も芸術も創作活動ですから、その道のプロはたくさんいます。その方面の資産を活用して来てくれる人を増やし、その方々から新しいアイデアと刺激をもらってさらに成長してくれたら、発展する方向性も見えてくると思います。
(了)
【柳 茂嘉】
<参加者> | |
(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏 |
|
九州大学大学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻 感性融合デザインセンター教授 坂口 光一 氏 |
|
(有)フクオカ・ナウ 代表取締役 ニック・サーズ 氏 |
|
九州大学大学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻修士課程 辻 桂子 氏 |
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら