「お客のニーズに応えて開発に励んできた」と、平然と語る(株)テムザックの高本陽一社長。しかし、ここに至るまでの10年間は地獄の淵を歩いてきたような苦しみを背負ってきた。最愛の妻も亡くした。その難渋さの一面も見せない高本氏の精神力には頭が下がる。筆者は様々な企業の危機を取材してきた。「給料遅配が生じても社員が辞めない」テムザックには兜を脱いだ。凡人の想像を絶する光景を幾らでも見せつけられた。いよいよ2011年は、テムザックの飛翔の年になりそうだ。日本をオサラバするかもしれない。
<インタビュー>
「蓄積してきたロボット技術、今年は帆を上げて世界へ」
株式会社テムザック 代表取締役 高本陽一氏
日本はロボット大国である、というのは、どうやら間違いない世界認識のようだ。人間の動きを模した、いわゆるロボットの技術は現在日本に最高の技術がある。その技術の一角を担う会社が宗像市に本社を置く株式会社テムザックだ。10年間、さまざまなロボットをつくり続けてきた同社は世界各国から注目を集めている。これまでとこれからを代表取締役の高本陽一氏に聞いた。(聞き手:弊社代表 児玉 直)
<オーダーメードで技術を培う>
―設立から10年が経ちました。この期間を振り返り、今をどう位置づけていらっしゃいますか。
高本 私たちは他のロボット屋さんとは少し違った組織なんです。ロボットを扱う会社は多くの場合、偉大な教授や研究者がいて、こういうロボットなら使えるはずだという見込みのもとで事業をしていますが、我々にはそういう偉大な人がいません。したがって市場予測のもとでのロボット製作というのではなく、エンドユーザーからオーダーを受けてつくることになります。その積み重ねで10年が経過し、やっと量産して商品化できるレベルまで達しました。やっと船が完成し帆をかけて海原に漕ぎ出すところまで来た、という感覚を持っています。
―オーダーメードでまずはつくって、それを磨いていって汎用性のある商品として量産していくのですね。裏に必ず顧客がいるというのは大きな強みだと思います。10年の蓄積が今から世のなかに広がっていくのですね。ところでロボットとひと口に言っても、たとえば工場にある産業用ロボットと貴社の製作するロボットとは明らかに違いますね。
高本 システムのなかの一部としてのロボットはファクトリーオートメーション(FA)と同義だと思います。繰り返し同じ作業を1ミリの狂いもなくやることができる、これは私たちの考えるロボットではなく機械の分野です。たとえば倉庫作業を自動化するためにFAを導入するとします。この場合、取扱荷物の量が増えたり、変わったりしたときにはFAを含めた倉庫全体を入れ替えなくてはならなくなります。私たちの考えるロボットは手で持って運んだり、足を使って階段を登ったりするので、作業場がどう変わろうと応用が利くのです。人間に近づけば近づくほど、ロボットは応用範囲が広がります。システム全体を変える必要がないので、ロボットはFAに比べてエコであるとも言えますね。
―これからはロボットの時代になるのでしょうか。
高本 FAは単一作業を継続的に精度高くハイスピードで行なうという意味では優れていますし、ロボットは応用範囲が広いという意味では他の機械を伍していると思います。これはどちらが優秀かというのではありません。どちらか一方ではなく、両方とも進化していくと思います。
<会社概要>
株式会社テムザック
代表者:高本陽一
所在地:福岡県宗像市江口465番地
設 立:2000年1月
資本金:10億7763万円
TEL:0940-38-7555
URL:http://www.tmsuk.co.jp/
※ 高本社長の「高」ははしごだか。
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