<新技術をいかにして広げるか>
―近年、無人化された兵器での戦いがなされています。貴社は広く世界から注目をあびていらっしゃいますね。そのなかには、軍事的な応用を考えての目というのもあるのでしょうか。
高本 海外ではロボットの研究予算を軍が捻出している国が多くあります。すると、高い研究費が得られるので、優秀な研究者がそういう国に集まることになります。日本は軍事力を保有しないという前提に立っていますから、ロボットのための予算を組むことはできません。民間に頼っている状態なのです。今は日本が世界のなかでも最も優秀なロボット技術を保有する国として第一線に立っていますが、このままでは追いつき追い越されてしまいかねませんね。
―軍事が新たな産業を生み出し引っ張るということは歴史が証明しています。
高本 アメリカのロボット屋は、兵器をロボット化するのは残酷なことではなく米国民を戦場に出さなくてすむのだから国民の利益につながると言っています。ロボットの軍事利用に対する考え方も国によって大きく異なりますね。ただ、おっしゃるように軍事によって新産業や新技術が磨かれるということはあると思います。自動車でさえ、開発された当初は「機械に乗って移動する必要などない。馬で充分」と言われていました。それが第一次世界大戦を経験して大きく発展して、今では平和利用されています。戦時利用ということで、大量生産が必要とされたので民間に技術が落とし込まれて広がっていったのです。飛行機も第二次世界大戦で大きな技術革新を得ました。軍事と新技術は切っても切れない関係にあったといえます。軍事を含めない技術革新、展開は人類史上だれもやっていません。
―兵器開発ということは国がかかわるということですね。
高本 軍事に限らず、国が技術を買うというのは大きなビジネス、大きな産業育成につながります。けれども、日本では前例がないものを買いません。新技術というのは前例、実績がないから他国に先んずることができるのです。前例のないものを積極的に使う公(おおやけ)の仕組みや考え方を、まずはつくらなくてはいけないと言う気がします。
<デンマークから世界基準を>
―今年は海原へ漕ぎ出すときとおっしゃいました。これまで数多くのロボットを生み出されましたが、これからの事業の柱となっていくのは、どの分野なのでしょうか。
高本 ビジネスの柱になりうる分野は見えてきました。今後、力を入れていきたい分野は3つあります。一つ目は家庭用ロボット(ロボリア・)、二つ目は一人乗り電気自動車、三つ目はレスキューロボットです。この3つを主軸に事業を展開していこうと思います。
―特に家庭用ロボットは海外からの注目も集めていると聞きます。
高本 北欧のデンマークでは今、高齢者介護の問題が深刻化しています。以前は受け入れた移民の方々が訪問看護を担っていましたが、今は移民政策の方向転換がなされました。これによって介護需要に対する供給が問題になったのです。そこで、弊社の家庭用ロボットにその役割を担わせようということになったのです。国がロボットを買い、高齢者の世帯に配ります。ロボットには通信機能がついていてカメラで映像を送ることができます。遠隔操作で移動することも可能です。このロボットをセンターで一括してコントロールし、健康状態を確認したり、見当たらなかったら探したりするようにすれば、介護の質を落とすことなくマンパワーを削減できるのです。今年の春くらいを目途にデンマークに関連会社を設立して、本格的に導入する予定にしています。
―世界的にかつてない試みですね。
高本 日本の技術をヨーロッパ経由で世界標準にしたいと思っています。そうなったら、日本もその標準に準じるようになるかも知れません。
―日本には技術があっても世界に広めることが下手なところがありますね。今年の飛躍を心からお祈りいたします。本日はありがとうございました。
<会社概要>
株式会社テムザック
代表者:高本陽一
所在地:福岡県宗像市江口465番地
設 立:2000年1月
資本金:10億7763万円
TEL:0940-38-7555
URL:http://www.tmsuk.co.jp/
※ 高本社長の「高」ははしごだか。
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