ひとくちに「地域活性化」「地域が元気になる」といっても、それは単に「観光客の増加」や「地域の経済的発展」のみを差すのではない。まず何よりもそこに住む人が元気になり、それが結果的に地域の活性化につながるようなものでないと、意味をなさないからだ。今回、それぞれが過去にさまざまな地域づくりに携わってきた3名の専門家にお集まりいただき、座談会を行なった。
<新たな地域ビジネスをコーディネート>
―まず自己紹介がてら、それぞれが今までに携わってきた活動について、簡単にご紹介をお願いします。
蓼原 私は現在、NPO法人えふネット福岡の専務理事という立場で活動しております。えふネット福岡はもともと、「エコノミー」という経済活動と、「エコロジー」という環境保全とが融合したときに、「何か新しい世界ができるのではないか」といったような考え方でスタートしています。
具体的に言うと、環境保全を行なっているNPO法人と、エコロジーという経済活動――具体的に言うと企業の2つが、コラボレーション――協同したときに「何か新しいビジネスのスタイルができるのではないか」「そのビジネスのスタイルによって社会が変わるのではないか」、そのようなことを目指しているNPO法人です。
今、具体的にやっているのは、「コミュニティビジネス」や「ソーシャルビジネス」あるいはそのソーシャルビジネスに企業の社会貢献――いわゆるCSRが協同することによって新しいビジネススキームが生まれる、そういったことについて、中間試験機関といったような役割で各種調整を行なっているというか、コーディネートを行なっています。
ですから、できるだけ国、行政、地域、企業、大学といったようなさまざまな関係性をうまくコーディネート――今の言葉で言うと、「アライアンス」するようなかたちで、地域の活性化、あるいは地域経済の活性化に向けて取り組んでいます。
<広い領域の「横つなぎの専門家」>
佐藤 私は現在、㈱環境デザインの代表取締役として活動しています。九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)の環境設計学科の出身なのですが、そこでの「環境」というのは、単に建築だけではなく、都市計画や土木などを横につなぐ「横つなぎの専門家」を育てようというのが主旨でした。
学生のときからそういう意識を植え付けられ、建築でも土木でも都市計画でもないというところで、若干あやふやな感じですが、そういう環境下で育ちました。その後、最初に卒業して勤めたところも工業デザインをやっていた事務所だったのですが、そこもまた単に工業製品だけではなくて、景観のビジネスだとか街路のバス停のデザイン、照明器具、はたまた博覧会のデザイン、そういう「どんどんモノから地域をつくっていく」、そのようなことをやっているデザイン事務所だったわけです。
そういった意味で、自ずと自分が勤めてきた背景なり何なりが、今の仕事の方向を決めてきています。現在の仕事の範囲としては、個人住宅のインテリアのような仕事から、都市計画の区画整理、何十ha規模の「街をどうするか」といったようなもの、さらには高齢者の住環境をこれからどうやってデザインしていこうかといったことまで、間口が非常に広くなっています。
時代がそういう要求をしているようなところもありますので、私自身がまちづくりに関わるというのは、学生のときから現在までの生業のなかで、どんどん領域が広がってきたようなものだと感じています。
【坂田 憲治】
<参加者> | |
NPO法人えふネット福岡 専務理事 蓼原 典明 氏 |
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(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏 |
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(株)地域マーケティング研究所 代表取締役 吉田 潔 氏 |
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