<第1四半期決算とリストラ策>
私は、平成20年3月期決算の際の山陽監査法人の当社資金繰りに対する懸念の厳しさと、7~8月に3件の売買が成立しつつあったものの、依然それ以外の物件は買い手がまったくない状況にあったこと、それに大分ホテルの融資切り替えは3カ月、札幌土地の融資切替えは1カ月という厳しい融資条件があるため、第1四半期決算の監査は、これまで以上に困難なものになると予想していた。
このため私は毎週の営業会議で、各物件がいったいどの程度の価格で売れそうなのかを掴むようにしていた。そして、その価格で売れたとしたら、いったい当社の利益はどのようなものになるのかのシミュレーションを随時行なった。その結論は、今営業で各顧客から聞いている価格目線で首尾よく売れていったとして、平成21年3月期通期はギリギリで最終利益がプラスマイナスゼロ、というものであった。実際には、営業がもっとも高いという価格で顧客と売買が成立することはほとんどなくなっていたので、本当はもう少し悪くなる、ということである。
さらに、その場合の資金繰についても組み立てていった。四半期決算の監査に入る前提として、向こう1年間の資金繰りの目処が立っていなければならない。もともとDKホールディングスのように、銀行から金を借りて、土地を仕入れ、そこに建物を建てて完成形にして売却する、という開発業の場合、資金繰りは、銀行から金が借りられることと仕入れた物件は必ず売れることを前提として組み立てることになる。しかしその当時の状況では、本当に銀行から金が借りられるのか、本当に物件が売れるのか、ということが問題になった。
加えて、今回の四半期決算より、「棚卸資産の低価法」という会計基準が適用された。簡単にいえば、棚卸資産つまり商品在庫が粗利益段階で赤字でしか売却できそうにない場合は、その赤字相当額を先に評価損として計上しなさい、という内容である。この評価損を計上するためには、各物件がいくらでなら売れるのかをきちんと説明できなければならない。そして、それはあくまでも会社が見積もることになっている。
つまり、会社として、今持っている物件がいくらで売れるのかを見積もり、その見積額によっては、即座に評価損を計上しなさい、ということである。会計士は、その見積が妥当か否かについて、独自に営業担当者にヒアリングをしたり別途資料を収集したり等して確認することになる。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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