元妻に捨てられた寺島氏は挫けずに高島市長に対する下記のような提言を弊社に寄稿した。
高島市政への提言
徹底した情報公開こそが市民の信頼を勝ち得る
~ボートの「漕ぎ手」から「舵取り」へ
民主党が推薦した現職の吉田宏氏を破り、自民党、公明党、みらい福岡の支援を受けた髙島宗一郎氏(36)が、戦後最年少の市長として第35代福岡市長に就任した。政治・行政の経験がなく、一部で不安の声もささやかれたが、12月市議会をそつなくこなし、ベテラン市議のなかには髙島市長を好感する声も聞かれ、まずは順調な滑り出しと評価できる。
<徹底した情報公開 市民と課題の共有を>
今後注目を集める喫緊の取り組みは、なんと言っても「こども病院の移転問題に関する検証作業」である。
髙島市長は、検証のポイントとして2点あげている。
ひとつは、(1)現地建替えの建築費が業者見積もりの1.5倍になった不透明な経緯を明らかにすること、もうひとつは、前回の内部だけの検証を専門家の見地も入れて再検証することである。
ご本人の方針の通り、このふたつのポイントについて、ぜひしっかりと検証し、市民の信頼を取り戻すとともに、福岡市の宝であるこども病院のイメージを回復していただきたいと切に願うものである。
この検証作業において最も必要なことは、何よりも「徹底した情報公開」である。私は、これができるかどうかで、検証の成否が左右されるものと考えている。なぜなら、「徹底した情報公開」による行政の透明化は、その公正さを担保するだけでなく、行政問題の背景にある「課題」を市民と共に共有することが可能となるからである。
これからの行政運営においては、「課題」を市民と共有できなければ真の理解と協力は得られない、と言っても過言ではない。今回の検証作業にとどまらず、今後、髙島市長が真に福岡市の発展を目指していかれるならば、市民、NPO、自治協議会、企業など多様な主体と「共働」していくことが不可欠であり、その「共働」の前提となるプラットホームとも言うべき「徹底した情報公開」こそが、最重要であることを強く申し上げたい。
社会は今、人口増加・高度経済成長の社会から人口減少・少子高齢化・経済の低成長の社会(成熟社会)へと、その構造が大きく変化しており、かつての高度成長期のように、税収が右肩上がりに増え続ける社会ではなくなっている。昨年よりも増えた税金をどう配分するかという時代ではなく、減少していく税収のなかで、ある分野の予算を削ってでも真に必要な分野に配分していくことが求められているという、厳しい時代である。さらに、市民ニーズの多様化も加わり、非常に難しい行政運営が求められている。
にもかかわらず、現状は明治維新以来の中央集権型の官僚システムが営々と続いてしまっており、国と地方を合わせて900兆円を超える借金や、経済の長期低迷、蔓延する閉塞感などの行政課題は、このような社会構造と政治・行政システムの乖離(かいり)に大きな要因があると言えよう。
<「漕ぎ手」から「舵取り」への変化を>
私は、成熟社会に相応しい行政運営を考えるときに、最も重要となるキーワードは、国と地方との関係においては「地域主権」であり、行政と市民との関係においては「共働」であると考えている。
「地域のことは、地域で決める」「自分たちでできることは、自分たちでやっていく」という精神こそが、まさに「住民自治」であり、真の民主主義ではないだろうか。
福岡市では、「共働」という言葉は、福岡市市民公益活動推進条例第6条第2号において「相互の役割と責任を認め合いながら、対等の立場で知恵と力をあわせて共に行動すること」と定義しており、これまでの福岡市政は、市民・NPOとの共働や自治協議会を中心とした地域コミュニティの自立経営に向けて、力を注いできた。この方向性は成熟社会の到来を踏まえたものであり、非常に的を射たものであると思っている。
人口増加・高度経済成長の時代は戦後の経済復興から始まったこともあり、大量生産、大量消費、規格統一の時代であり、できるだけ迅速に、日本中に一律に、公共投資や行政サービスを展開していくことが主眼であったと言える。そして、官僚システムを代表とするピラミッド型の公務員組織は、組織内での命令系統が明確であり、行政自らが公共サービスの提供主体となって、大量に規格統一的に展開していくことについて大きな機能を果たしてきた。
しかし、成熟社会においては、前述したように人口減少・少子高齢化、経済の低成長に加えて、市民ニーズが多様化しており、行政需要や行政課題も複雑高度化してきている。このような時代においては、市域内に統一的に、金太郎飴のような施策を実施するだけでは市民の理解と共感を得ることは困難であり、年々厳しくなる財政状況を踏まえながらも、地域の特性に応じたきめ細かい多様な施策を展開していくことが求められている。
このような状況においては、もはや「公共(パブリック)」という分野を行政だけで担っていくことは困難である。市民、NPO、自治協議会、企業など、多様な担い手と共働していかなければならない時代である。そのためには、情報を外に出したがらないこれまでの行政の体質を改め、「情報公開」と「共働」ということに関して抜本的な意識改革を行ない、「ボートの漕ぎ手(自ら公共サービスの提供主体となること)」から「ボートの舵取り(地域が必要とする公共サービスをコーディネートすること)」へと、その役割を大きく変えていくことが重要である。
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