実はこの会計処理の手法は、コンプライアンス委員会が問題にするはるか以前から疑問視する見方が広がり、在京の経済誌や経済ジャーナリストたちが2006年ごろから「粉飾まがい」と報じてきた代物である。しかし、そうした報道に対してJAL広報部は猛反発し、広告出稿の引き上げや取材拒否などをちらつかせてジャーナリストたちを恫喝してきた。JALに詳しいビジネス誌の記者はこう打ち明ける。
「非常におかしな会計処理と思うのですが、日本を代表する監査法人の新日本が適正意見を下したものを断定的に『粉飾』と報じることは難しかった。それがやっとコンプライアンス委員会によって、おかしさが浮き彫りになりました。新日本の責任は重大でしょう」。
最終的にコンプライアンス委は「(問題となった会計処理は)古くから行なわれており、なぜこうした処理が始まったのか経緯が不明確」「意図的な益出しとまではいえない」などとして、旧経営陣への刑事、民事上の責任は問えないと結論づけた。法的責任の追及を免れたJALの旧経営陣と新日本はきっと胸をなでおろしたことだろう。
こうした「粉飾」が疑われる決算にお墨付きを与えてきた新日本は、09年度に4億8,800万円もの監査報酬をJALから受け取ってきたことが、JALの有価証券報告書から明らかになっている。新日本は07年度には3億2,700万円、08年度も3億6,800万円という高額の監査報酬をJALから受け取っており、新日本にとってJALは大事なお得意さんだったろう。
仮に、怪しい会計処理の見返りが高額報酬だとしたら問題である。果たして、JALの過去の監査報酬は適正価格だったのだろうか。
【尾山 大将】
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