<無限の可能性を秘めた島々>
直島の宮浦港より旅客船で20分の距離にある「豊島(てしま)」。昔から稲作が栄えていて豊かなために「豊島」と名づけられたと言われており、人口約1,000人、周囲約20㎞ほどの小さな島である。島の中央にそびえたつ標高約340mの壇山からは「豊島石」という石材が産出され、灯篭などに重用されている。美しい瀬戸内海に浮かぶ、豊かな自然が残された島である。
この豊島にも、「ベネッセアートサイト直島」が展開するアート施設が存在する。
「クリスチャン・ボルタンスキー『心臓音のアーカイブ』」では、世界中の人々の心臓音をアーカイブしている。そこで感じたのは、生と死の対照性のなかにある恐怖感に近い感情。アート作品の心臓音と自身の心臓音が共鳴し、生きるということの力強さを感じさせられた。
2010年10月にオープンしたばかりの「豊島美術館」は、建築家・西沢立衛氏とアーティスト・内藤礼氏によるもの。瀬戸内海を望む小高い丘に建設された、建設と作品と環境が融和し合うものとなっている。
その豊島だが、かつて産業廃棄物の不法投棄問題がテレビに取り上げられたことにより、全国的に一躍有名になったことがある。そのことで多くの人が島に訪れたのだが、産廃問題が過去のものになるにつれ、島を訪れる人の数は減っていったという。豊島観光協会の末宗氏は、「豊島の特産物は、過去の産廃問題で風評被害を受けたこともある。しかし、産廃問題も収束に向かっていることだし、これからはもっと積極的に出していきたい。豊島は自然が豊かな島。この自然をゆっくりと守りながら、豊島をアピールして進展していきたい」と話す。
過去に産廃問題で有名になった島が、それを逆手に取りながら自然をアピールしていくというのは、非常に面白い試みだと思う。ただし、日本国内の他の離島でも豊かな自然をアピールしている島は多いだけに、そのなかでいかに差別化を図っていくか、課題は多い。それでも、この自然豊かな美しい島が、今後どのように進展をしていくのか、非常に楽しみである。
【長嶋 絵美】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら