<店が増えることで点がつながり線に>
早瀬 実は、私の妻が僧伽小野さんのファンでして(笑)。妻から美味しい料理がいただけると聞いたのが、小野さんを知ったきっかけでした。今では観光客の方が小野さんのところで食事をして、私のところでロールケーキを食べて帰るという循環までできあがってきています。来ていただいて本当によかったと思っていますよ。
小野 私は逆に早瀬さんたち先人が糸島ブランドをつくってくれていたおかげで、良いかたちでのスタートを切ることができたと考えています。久家、船越、寺山などの自治会の方々にも本当にお世話になりました。地域の方々と一緒に、恩返しをしながら続けたいと思っています。
早瀬 これまで、それぞれの店が点のように散在していました。それが小野さんとうちのように、線を描き始めています。これは地域の魅力を高めることにつながっていると思います。
小野 お互いに補強し合える関係が築けたら素晴らしいですよね。これは店だけではなく、地域の方との交流も同じだと思います。私は毎日1、2度、糸島に行ってゴム長を履いて魚の仕入れをしています。周囲の方のなかには、オノグループの経営者とは知らない方もいらっしゃると思いますよ(笑)。「よう、小野さん、今日はこんなの揚がってるよ」という具合です。私自身、たたき上げられて料理人になったので、このように弊社には社員が70名おりますが、糸島で農業を経験したり、作法を学んだりする場として、なくてはならないものになってきています。
【文・構成:柳 茂嘉】
<プロフィール>
小野孝(おの・さとし)氏
昭和47年奈良県生まれ。大阪吉兆で日本料理を修業し、先輩弟子の独立開業を手伝うために博多へ。25歳のときに自身も独立、中央区舞鶴に「DINER'S ONO」を開店させる。以後、さまざまな形態の飲食店を展開し、2010年3月には旅館「僧伽小野」を糸島でオープンさせた。
早瀬憲太郎(はやせ・けんたろう)氏
昭和22年岐阜県生まれ。東京でサラリーマンを経験した後、幼い頃からの夢だった養鶏家になるため糸島へ。独自の養鶏技術で、黄身がつまめる卵「つまんでご卵(らん)」を開発。生産が追いつかないほどの好評を博す。
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