<店舗を閉めディスカウントのテナントになるのも一つの道>
佐賀県内でスーパーマーケットを展開する(株)ニコーの「ニコー神埼店」が1月15日をもって閉店した。2月下旬にディスカウントストアの「ダイレックス」となり、ニコーは鮮魚と精肉のテナントとして入居する。ニコー神埼店のある国道34号線近くは至近距離にマルキョウ、コスモス薬品、スーパーモリナガがあるほか、少し離れた上峰町にトライアル、上峰サティがある小売激戦区。とくに、近隣の競合店舗で冷凍食品6割引のキャンペーンを定期的に実施するなどしていたため、関係者によれば、近年のニコー神埼店の来店数は激減していたという。そこで、自分たちでやるよりも、勢いのあるディスカウントのテナントに入ることが得策と考えたのだろう。
企業によっては、スーパー業態から、ディスカウント業態を新たにスタートさせるところも増えている。近年は、ネットスーパーを開店するところも多くなった。生き残りをかけてさまざまな手段を取っているが、今後は、生鮮食品、加工食品が強いスーパーならば得意分野のテナントに特化して勝負するという話も増えてくるかもしれない。無理して店舗運営をして赤字を垂れ流すよりはマシだからだ。しかしながら、数年前、スーパーマーケットがディスカウントストアのテナントとして入り、生き残りを図るという時代が来ることを誰が想定しただろうか。
<新商品が店頭に並ばない時代がやってくる?!>
とある上場企業の食品メーカーの営業担当者は次のように危惧する。「九州はディスカウントストアが多すぎです。これは全国的に見ても異常。以前、とあるディスカウントストアでうちの看板商品が目玉商品にされ原価以下で販売されていることもありました。売場を見て泣きそうになりました。しかし、あまりにも安く売られる場合は最悪、商品が供給しにくくなる可能性もあるんです」と指摘する。
昨夏、猛暑によりアイスクリームが売れに売れ、商品の欠品が目立つ事態が発生したのは記憶に新しい。しかし、背景には関東、関西と比べ、九州地区には納品が少なかったことがあった。さまざまな理由があるだろうが、冷菓メーカーが適正価格で販売されている地域に優先順位を付けて納品した可能性もある。将来的に九州地区の小売業がディスカウンターのみになった場合は、最悪、新商品が店頭に並ばないという事態も発生するかもしれない。九州地区だけが、市場が異常だから、蚊帳の外になるのは避けたいもの。やはり小売業もバランスが必要で、スーパー業態とディスカウント業態が両方あってこそ成り立つものだと考える。そのためにはスーパー業態のさらなる奮闘を期待するしかない。
【矢野 寛之】
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