福岡ひびき信用金庫　理事長　谷石　喜一

＜北九州の各業界における明るい話題作り＞

　北九州では、現在の景況感から、行政、経済界、金融界がともに、「明るい話題を引っ張り出そう」とする動きが強いと感じます。
　たとえば、2009年12月、北九州市の「環境モデル都市」という取り組みに対して、中国の習近平副主席による視察が行なわれました。スポーツでは、Ｊ２に昇格した『ギラヴァンツ北九州』が、厳しいと言われるクラブ経営のなか、広報活動に力を入れています。また、2010年７月ぐらいまでには、響灘に九州一のグラウンドが完成し、それに伴いソフトボールのシニア九州大会を誘致するそうです。
　一方、経済界も厳しい状況です。北九州市として力を入れている、車の生産台数150万台構想にはなかなか届いていません。トヨタ、日産、ダイハツとありますが、需要が低調なため、どこも生産が落ち着いてしまっています。しかし、そのなかでも、環境意識の高まりと、将来に向けての選択肢の意味あいからガソリン燃料車と電気自動車との中間的な位置づけで、水素自動車の開発への取り組みが行なわれています。
　そして、金融界では2009年12月４日、中小企業金融円滑化法施行という変化がありました。私ども信用金庫の取引先は、中小企業と個人、あるいは個人事業者です。要するに取引先のほとんど全てが今回の法律の対象となります。相談案件は、平時であれば月10～20件しかないものが、やはり同年末あたりから急増しました。それに対して、当金庫ではまだ拒否案件は１件もありません。
　この件については、「従来どおりの取り組みに加え、さらにひと手間もふた手間もかけた対応をやっていきますよ」ということを声を大にして申し上げています。
　窓口での対応にあたっても、条件変更に極力応じるようにしています。なぜなら、「業種だけで判断するな、内容も聞かずに断るな」という指導をしているからです。しかしそれは、従来から信用金庫が全体の99・6％を占める中小企業へ行なっていた、「ギリギリまで融資する」という姿勢とひとつも変わりません。

＜アイディアと行動で『信金道』を実践＞

　痒いところに手が届くような対応をする金融のあり方を進めていく、これこそが本当の金融機関の王道なのではないでしょうか。
　私は理事長になって４年になりますが、理事長になったときにひとつの信条として「顔を見る経営、声を聞く経営」ということを決めました。そのなかで、昨年12月には50店舗ある支店をすべて訪問いたしまして、円滑化対応の話をしました。
　それ以外にも、毎年取り組むべきキーワードを決めています。初年度は「ツートップ経営でシームレスにやる」。２年目は、いろいろと起こり得る問題に対して、「凡事徹底」ということをキーワードに挙げました。３年目は、地元のことを落ち着いてやれるようになりましたので、「地元のためにできることを、みんなで考えてやろう」がテーマでした。そして2010年度のテーマは、「ひと工夫、ひと手間かけて『信金道』をとことん実践する」です。たとえば金融円滑化法のことひとつを取っても、不動産だ、建設だからといってお断りできません。まずは、お客様の話をしっかりと聞いたうえで、アイディアを出し、汗をかきなさいということです。それらを実践してこそ"信用金庫"が認知されると考えています。

＜プロフィール＞
谷石　喜一　（たにいし　よしかず）
1941年、10月生まれ。北九州市立大学卒業後、64年、「北九州八幡信用金庫」に入庫。06年、「福岡ひびき信用金庫」の理事長に就任する。趣味はドライブと温泉めぐり。座右の銘は「顔を見る経営、声を聞く経営」。

＜会社概要＞
福岡ひびき信用金庫
代表者：谷石　喜一
所在地：北九州市八幡東区尾倉2－8－1
設　立：2001年11月
出資総額：36億2,100万円
ＴＥＬ：093-661-2311
ＵＲＬ：http://www.fukuokahibiki.co.jp/

※本稿は以下の書籍に掲載されています。

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