「地域振興」や「まちづくり」を考えるうえで、ポイントとなるものはいったい何か――。3名の専門家にお集まりいただき、座談会を行なった。
<転換する価値観>
吉田 今の佐藤さんのお話ですが、その沖縄のおばあちゃんたちがいる市場は、経済活動である「商業」という切り口で見ると成り立ちません。しかし、直接的な商業以外の切り口で見ると、その市場が非常に重要なポジションを占めていることがわかります。
また、先ほどのお話にもありましたが、沖縄が全国の他の地域と比べて優れている部分では、「出生率が全国一高い」というのがあります。これはなぜ高いのか、ということを沖縄の人に聞いてみると、「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」――つまり、命こそが宝物、ということを言うのです。
やはり沖縄の方々は、過去に苛烈な沖縄戦を経験され、あれだけ多くの方が亡くなって、命の大事さを学んだわけです。ですから、出生率が高く、子どもが多いというのです。
これはつまり、保育所をつくるとか、子育てのためにいろいろな支援をするとか、そういうことだけではダメなのです。こういう価値観は、つくろうと思っても一筋縄ではいきません。まさか、戦争するわけにもいきませんし。
先ほどのお話にもありましたが、そういう価値観が今まさに転換していっているのです。
<「道の駅いとだ(福岡・糸田町)」の事例>
吉田 私は今、福岡県田川郡の糸田町というところで、道の駅に農産物の直売所をつくる計画に携わっています。
この「道の駅いとだ」は2011年の春にオープンするのですが、当初は町の人からも「ほかと比べて特色のある農作物もないのに、そういうものは成り立たない」といったような反対意見が非常に強かったのです。しかし、ほかにこれといった産業がありませんから、町を活性化するためにはやらなくてはなりません。
筑豊地方の人たちというのは昔炭鉱で栄えた地域だけあって、「石炭を掘ればお金になる」というような、いわば狩猟民族的な発想・体質になっているそうです。その影響もあって、農業のように「地道に育てる」という労働習慣がなかなか根付かないとも言います。
ですが、今は産業の転換期に来ています。やはり、「農業でも何でもやらなければ食べていけない」というような意識にはなってきているようです。
そのため、そういった道の駅をつくって町の活性化を、という話になっています。
そして、いざ計画が始まるとなると、出荷希望者は結構出てきています。ただ、出荷希望があったからといって、何でも出していては、地域の特色・方向性などがあやふやになってしまいます。今はまだ途中段階でそこまで至っていませんが、これから整理を行ない、この地域ならではの特色のあるものをつくってやっていきます。
ただ、あのあたりはこのところ急に直売所がたくさんできていまして、競争が激しくなっています。そのため、「道の駅いとだ」では立地の良さ――トンネルを抜けてすぐの場所にありますから、そこの立地を活かしてうまくやっていこう、としています。
やはり、そういう産業分野にしても価値観の転換がありますし、先ほどの話のように命に対する価値観の転換もあるのでしょうね。
【坂田 憲治】
<参加者> | |
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NPO法人えふネット福岡 専務理事 蓼原 典明 氏 |
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(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏 |
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(株)地域マーケティング研究所 代表取締役 吉田 潔 氏 |
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